天気図に等圧線を記入する問題は一見難しく見えますが、明らかな傾向(パターン)があります。これを押さえることで、確実な得点源にすることが可能です。
※本稿は第42回〜第56回の出題を対象に分析した結果です。
※過去問題を次のように表記します。
例)50-1-2(3)② : 第50回 実技1 問2(3)②
出題傾向の概要
等圧線解析とは何か
天気図に等圧線を記入し、気圧配置を把握することを等圧線解析といいます。気圧配置の特徴を強調して分かりやすくしたり、局地的な低気圧の存在を確認することができます。
試験では、天気図に細かい気圧値が与えられるので、矛盾しないように等圧線を描画します。
出題の概要
出題内容
等値線解析には、ASAS天気図の等圧線に補助等圧線を引かせる問題(以下、「ASAS天気図解析」)と、局地天気図に等圧線を引かせる問題(以下、「局地天気図解析」)の2種類があります(詳細は後述)。
それぞれで着眼点が異なるので、両者の違いをよく理解してください。詳しくは別記事(対策編)で解説します。
出題の狙い
問題で与えられた気圧の値を矛盾なく等圧線で囲むだけでは、解答案が複数できてしまうことがあります。正しい等圧線を引くには、等圧線の正しい理解と風の場を読む解析力が必要です。
等圧線解析問題は天気図を読む総合的な基礎力を試すのが目的であると推測されます。
出題の形式
解答用紙に印刷された天気図に等圧線を記入します。等圧線を引くために参照する気圧値は問題文で与えられる場合と、解答用紙の天気図に記入されている場合があります。
記入にあたっては等圧線の種別(実線・破線)やそのほかの指示がつくことがあります。
出題実績と配点
過去15回の試験で10回出題されており、出題頻度が高いことが分かります。配点は5点以上のことが多く、大きな得点源になります。
①ASAS天気図解析
- 43-2-1(2) 2点
- 50-2-1(4) 4点
- 51-2-1(6) 3点
- 53-2-1(2) 7点
- 56-2-1(1) 4点
②局地天気図解析
- 42-2-4(1) 2問合わせて10点
- 45-1-3(1) 4点
- 46-2-3(1) 6点
- 49-2-3(1) 9点
- 52-1-1(5) 8点
ASAS天気図解析の傾向
出題内容
解答用紙に印刷されたASAS天気図に補助等圧線を記入する問題です。観測地点の気圧が解答用紙にしか与えられない出題もあるので、解答の下書きを問題用紙に行うことはできないことがあります(図1)。
問題文では「気圧分布の特徴が分かりやすくなるように、解答図の枠内に1010hPaの補助等圧線を記入せよ」というように、記入する補助等圧線の気圧値が与えられます。
解析する天気図には必ず高気圧や低気圧が含まれており、その周りに等圧線を引きます。これまでの出題は高気圧や低気圧の周りにのびる曲線状の等圧線を解析させるもので、低気圧や高気圧のような閉じた等圧線を解析させる問題はありません。
記入する補助等圧線の本数は1本とは限りません。例えば、56-2-1(1)の出題では「描くことのできるすべての1010hPaの補助等圧線を破線で記入せよ」とあり、記入する補助等圧線が複数本あることが示唆されていました。
補助等圧線は破線で描画するのが一般的です。過去5回の出題でも、ほとんどが破線で記入するよう指示されています。1回のみ(43-2-1(2))線の種別の指示がありませんでしたが、模範解答では破線で記入されていました。
「実線で記入せよ」という指示がない限り、破線で記入しましょう。
補助等圧線とは
地上天気図の等圧線は1000hPaを基本に、4hPaごと(1000, 1004, 1008, 1012, 1016, 1020hPaなど)に描かれています。
補助等圧線(1002, 1006, 1010, 1014, 1018hPaなど)は、等圧線の間隔が広い場合に2hPa線を破線で補うものです。ただし、高気圧・低気圧の中心気圧は原則として2hPa単位で解析されるので、中心気圧が4の倍数でない場合は破線で描画されます。
予報士試験ではこれに関わらず、「気圧分布の特徴が分かりやすくする」ために補助等圧線を描かせています。
着眼点
等圧線を境にして片側には低圧側、逆側には高圧側が来るのが等圧線記入の鉄則です。例えば1010hPaの等圧線で囲まれた低気圧の場合、等圧線の内側は1010hPaより低い気圧、外側は1010hPaより高い気圧が存在します。
しかし、問題で与えられた気圧値だけを見ながら等圧線を引くと、誤った解析をしてしまうことがあります。
図2は、図1の天気図に1010hPaの補助等圧線(緑色の破線)を記入したものです。中央に1012hPaの高気圧があるので、吹き出しで与えられた気圧値の中から1010hPaより高い気圧値を補助等圧線で囲みました。
一見すると与えられた気圧の値と矛盾なく引いているように見えますが、等圧線のルールに反しているので誤答です。
補助等圧線を正しく描画するコツは、与えられた気圧値だけでなく、広い視野で高圧部と低圧部の配置を把握し、その境に記入することです。
局地天気図解析の傾向
出題内容
解答用紙に印刷された局地天気図に等圧線を記入する問題です。問題によっては台風や低気圧の中心位置を特定させることもあります。
観測地点の気圧が解答用紙にしか与えられていないので、解答の下書きを問題用紙に行うことはできません(図3)。
局地天気図とは
メソ低気圧や沿岸前線など、メソスケールβ、γの現象を解析するために用いられる天気図を局地天気図といいます。等圧線解析のほか、風、気温などの解析が行われます。
着眼点
試験で出題される局地天気図解析は、メソスケールの低気圧を見つけるのが目的です。風向に着目して、低気圧性循環(反時計回り)を探します。
問題文には、「1000hPaの等圧線を実線で記⼊せよ」と気圧値が指定される場合と、「990hPa以下の等圧線を解答図に実線で記入せよ」のように気圧の範囲が与えられるものがあります。後者の場合は記入する等圧線の値が1つとは限らない(例.990hPa, 988hPa)ので、与えられた気圧値から何本引くことができるかを判断します。
図4は第46回の出題「未記入となっている990hPa 以下の等圧線を解答図に実線で記入し,その気圧値を併記せよ」の解答例です。このように複数の気圧値の等圧線が引けるだけでなく、低気圧の中心が2つ解析されることもあります。
「解析する気圧値は1つだけ」「低気圧性循環は1つだけ」と決めつけずに、気圧値の範囲と風向きをよく見極めることが大切です。
まとめ
等圧線解析問題の傾向をみてきました。
最後にASAS天気図解析と局地天気図解析の特徴を一覧にしておきます(表1)。
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