典型的な前線(下)

(上)では850hPaの実況解析図を使って前線解析をしてみました。

典型的な前線(上)

今回は、12時間先の予想図を使って、前回と同じ時刻(2020年4月4日9時)の前線を書いてみたいと思います。

今回も前線記号は省略しました。

 

▼850hPa気温・風、700hPa上昇流 12時間予想図の前線

図1は850hPa気温・風、700hPa上昇流12時間予想図(FXFE5782)に記入した前線です。

寒冷前線は0℃線沿いで明瞭ですが、どこまで引くかは悩みます。北よりの風は東経123°まで吹いていますし、上昇流域に至っては東経119°まで続いています。ここでは前線の北側の上昇流域が終わるところまで引いてみました。

温暖前線は等温線の間隔が開いていますが、−9℃〜0℃を等温線の集中帯とみなし、その南縁である0℃線にしました。0℃線に沿って引いていくと、その北側の上昇流域と離れていってしまうので、そのギリギリのところで止めました。

 

図1 850hPa気温・風、700hPa上昇流12時間予想図

 

なお、0℃線は北海道のところで大きく南西に凹んでいます。北風が吹いているわけでもないので、深く考えずに無視しました。何かしら地形的な要因の可能性も考えましたが、他の日の天気図ではこのような形状はしていないので定常的なものではありません。

 

▼地上気圧、降水量、海上風 12時間予想図の前線

図2は地上気圧、降水量、海上風12時間予想図(FXFE502)に記入した前線です。

 

図2 地上気圧、降水量、海上風12時間予想図

 

参考書には、「850hPaの前線を地上天気図に描写するには、暖気側に1〜2度程度ずらします」と書かれています。

図2では寒冷前線が1012、1016hPaの2本の等圧線と交わるところに、緑の丸をつけてあります。ここは等圧線が張り出し、気圧の谷になっています。

このように明確な気圧の谷がある場合は、そこを通すように850hPaで書いた前線をずらしてあげましょう。図2でずらした幅を測ってみたら、暖気側(南側)に1度ずれていました。

ずらす目印になるのは、このような気圧の谷のほかには、地上のシアーラインがあります。しかし、このような明確な目印がなければ、そんなに神経質になる必要はないと思います。

 

【補足】850hPaの前線を地上天気図に転記する際、暖気側に1〜2度程度ずらす理由

「前線の傾き」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。前線は坂のように傾斜がついており、温暖前線も寒冷前線も高緯度側に向かって登っていく形状をしています。

傾斜の程度は温暖前線は1/50〜1/250、寒冷前線で1/100〜1/150ぐらいです(文献によって異なります)。

仮に温暖前線の傾きを1/200とすると、水平方向に200m進んで鉛直方向に1m上がるということです。同様に、寒冷前線の傾きを1/100とすると、水平方向に100mで鉛直方向に1mとなります(図3)。

 

図3 前線の傾き

 

850hPaの高度を1500mとすると、前記の傾斜を使うと水平距離にして150〜300km、すなわち緯度にして1〜3度弱、南側にずらすことになります。

 

▼850hPa相当温位 12時間予想図の前線

図4は850hPa風・相当温位 12時間予想図(FXJP854)に記入した前線です。

予報士試験では850hPa風・相当温位予想図を使った前線解析の出題が頻繁に出題されています。

 

図4 850hPa風・相当温位 12時間予想図

 

図2で引いた寒冷前線と比べると、図4の寒冷前線は短く、朝鮮半島より東側で切っています。その理由は、これより西側では暖域に北西の風が入り込んでくるためです。

これが唯一絶対の解ということではなく、私はそのように考えたということです。

試験の採点者は、「この人はこう考えたようだから、部分点をあげよう」という考え方をするそうです。部分点をもらうためにも、前線を引く際には「他人にも分かりやすい考え方をする」ことが大切ですね。

 

【補足】前線付近を吹く風

前線付近の風向は、暖域(寒冷前線と温暖前線にはさまれた領域)では南より(西南西〜南南西)で、暖かく湿った空気が吹き込みます。一方、寒冷前線の後面の風は北より(北北西〜西北西)で、冷たく乾燥した空気が吹き込みます(図5)。

高緯度側と低緯度側の温度差を解消するという低気圧の役割を考えれば、これは当然のことです。

 

図5 前線付近の風向

 

過去問題を見ると、前線解析は等温線(等相当温位線)で行うのが基本ですが、風向を読ませて等温線から外れるケースも出題されています。毎日の天気図の実例を見ながら、経験値を増やしていきましょう。

 

▼最後に

今回は等温線集中帯が明瞭な事例を取り上げました。試験には難しい問題も出題されますが、基本的には素直な事例が多いと思います。

現実には日々の天気図を見ていると、「これのどこが等温線集中帯なんだ?」という事例や、上層のジェット気流と対応づいていない前線もたくさんあります。

資格取得後はその辺のギャップに悩みましたが、今では「気象予報士は、天気図を総合的に理解できれば良い」と割り切っています。

 

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