前線や雲域、強雨域などが発生している場の特徴を述べさせる「どのような場か?」「どのようなところか?」「どのような位置か?」は、実技試験で頻出の記述問題です。
何を問われているのかが漠然としているため、答え方に苦労する人も多いと思います。
場の特徴の表現方法には一定のルールがあります。過去の出題事例を通して、そのような表現方法を学んでいきましょう。
※出題傾向はこちらにまとめてあります。
解答文の構成
雲域や強雨域が発生する場を表現するには、「①気象現象・要素」、「②特徴」、「③位置」という3つの要素を押さえることが基本です。
気象現象・要素とは、低気圧、高気圧、気温、相当温位、風などを指します。設問では「地上天気図のどのようなところか」や「850hPa相当温位分布のどのような場か」という具合に、着目すべき高度や気象要素を指定される場合がほとんどです。
特徴とは、気象現象・要素がどのような性格を帯びているかを表す修飾語です。例えば「強い」「混み合った」「高い」などです。気象現象・要素に応じて、問われる特徴はある程度の傾向がみられます。
位置は、そのような特徴を示す場のどこに位置しているかということです。これも傾向を押さえることで答えやすくなります。
以上の3つの要素については、後ほど具体例で詳しく見ていきます。
繰り返しになりますが、「雲域や強雨域がどのような場にあるのか?」という問いに対しては、「どのような(=特徴)気象現象・要素の、どのような位置にあるか」と答えるのが基本になります。これをしっかりと頭に入れておきましょう。
では、具体的な解答の構成を2つ見てみましょう。
例1)
「降水をもたらす雲は下層の暖湿空気のどこにあるか」という問いに対して、図1の赤円がどのような場であるかを解答します。
模範解答がこちらです。
①気象要素・現象は設問で与えられている「暖湿空気」そのままです。
それがどのような②特徴を持っているかというと、「相当温位が高い」となります。
ちなみに、暖湿空気はそもそも相当温位が高いので「相当温位の高い」は冗長な表現にも思いますが、360Kは真夏でもなかなか現れない値なのであえて加えたものと思われます。
さらに、図1の赤円はそのような場のどこに③位置するかというと、その「先端」になります。気象現象は気象要素の変化が大きいところの境界、端(はし)で発生することが多いものです。
このように、「どのような場か?」問題の解答文には、「①気象現象・要素」、「②特徴」、「③位置」という3つの要素が含まれています。全要素が揃わずに、特徴または位置が欠落することもあります。
続けてもう一例、見てみましょう。
例2)
「低気圧の中心は下層暖湿空気のどこにあるか?」という問いに対して、図2の赤枠がどのような場であるかを解答します。
模範解答はこうです。
解答文の核になる①気象要素・現象は、設問で問われた「下層暖湿空気」です。
それがどのような②特徴を持っているかというと、「北に突出」しています。「暖湿空気が北に突出」するというだけで、顕著現象が発生しそうな気がします。
さらにそのような場のどこに③位置するかというと、その「ところの西縁」ということです。
3つの要素の事例解説
解答文の構成が理解できたところで、出題事例を通して3要素を具体的に見ていきたいと思います。
①気象要素・現象
設問では、「低気圧の中⼼が,500hPa ⾯のトラフ および下層の暖湿空気のどのような位置に予想されているか」というように、着目すべき等圧面や気象要素が指定されることがほとんどです。
過去に問われた気象現象・要素を等圧面ごとにまとめます(表1)。
出題傾向としては、下層(850hPa、地上)の気象現象・要素が多いことが分かります。また、等値線(相当温位、湿数)関連の出題が多くなっています。
なお、相当温位に関するものが多くなっていますが、これは同一問題の枝問で出題数が増えているという事情もあります。
では、表1の中から低圧部について説明します。
【低圧部】(42-1-3(2)①)
等圧線のかかれた局地天気図から、強い雨域A,Bの位置する気圧場として「低圧部」を答える問題です。
局地天気図ではメソスケールの現象を解析します。メソスケールの現象は相対的に寿命が短いため、頻繁に解析を行います。等圧線解析は1〜2hPaごとに行います。
局所天気図を使うと、総観規模の天気図では把握できない規模の小さい現象や地形の影響などを読み取ることができます。
低圧部とは、「高さ(気圧)の同じ面で、周囲よりも気圧(高度)が低く循環が弱くて、中心が特定できないところ」を言います。
類似用語として気圧の谷があります。気圧の谷とは、「高圧部と高圧部の間の気圧の低いところ」(気象庁)です。
本問の雨域は周囲より低い1001hPaの等圧線の内側にありますが、周辺に高圧部が見当たらないため「低圧部」とするのが妥当です。
②特徴
①で取り上げた気象現象・要素の特徴を表す表現をまとめます(表2)。
特徴欄の「〜」には気象現象・要素が入ります。例えば、「リッジ場の〜」なら「リッジ場の正渦度域」という具合です。
表2の中からいくつか説明します。
【リッジ場の正渦度域】(45-1-1(3))
問題の趣旨は「図の赤枠は、500hPaの渦度場のどのようなところに発生しているか」というものです(図4)。
赤枠は説明の便宜上つけたもので、別途提示される気象衛星画像ではここに雲域があります。
同じ時刻の500hPa天気図を図5に示します。ちなみに、この図は試験では与えられていません。
赤い線で示した−6℃の等温度線が南に張り出し、日本の南海上まで寒気が流入しています。このようにリッジ内の正渦度域は、高気圧圏内の中に入り込んだ寒気等を示すことがあり悪天になる場合があります。
リッジ内の正渦度域とは逆に、「トラフ内の負の渦度域」があります。これは、低気圧圏内の中の発散域で好天をもたらします。
【相当温位の極大域付近】(50-1-2(3)②)
前12時間降水量予想の極大位置がどのような場所にあるか、相当温位と風に着目して答えさせる問題です(図6)。図6(a)で赤枠をつけたところが降水量予想の極大で、対応する場所を図6(b)に転記しました。
模範解答は「相当温位の極大域付近で風の強いところ」です。「極大域」は、等高度線の山頂のように、相対的に周囲よりも高いところという意味だと思います。図6(b)の黄色い破線で示したように、この周辺では345Kが最も高い相当温位線になっています。
一般に、相当温位線の集中帯を南よりの風が吹くと暖湿気が移流するので、上層の気温次第では大気の状態が不安定になります。
したがって、解答のポイントは、
- 相当温位が高い領域
- 強い風が吹く
の2点が含まれることです。
「相当温位の極大域」という表現は慣れていないと出てこない表現なので、覚えてしまっても良いと思います。「風速の極大域」という表現もあります。
過去に出題された類似表現として、「相当温位が相対的に高い領域」、「相当温位の高い気塊」、「相当温位の尾根」、「相当温位傾度の大きいところ」があります。合わせて覚えておきましょう。
なお、高相当温位は数値で表現するのが一般的なので、私なら「345K程度の相当温位で強い風が吹くところ」と解答します。
【等相当温位線の集中帯】(42-2-2(4)③)
700hPa上昇流が大きいところを850hPa相当温位分布から読み取る問題です(図7)。該当箇所を赤枠で囲んであります。
一般に、低気圧に伴う上昇流は、上層の正渦度移流域と下層の暖気移流があるところで大きくなります(「トラフを理解する(4)」で解説予定)。図7(a)を見ると低気圧中心は沿海州にある上昇流の「−112」という極大値が相当します。
問われている領域は低気圧の中心ではなく、等相当温位線の集中している寒冷前線に沿った領域になります。
普通に答えるなら「前線に向かって336K以上の暖湿気が流入するところ」となりますが、「相当温位分布を読み取ること」と指定があるので「等相当温位線の集中帯」となります。
【高相当温位】(41-1-4(3))(42-1-3(3)④)(42-2-1(3))(42-2-2(4)③)(44-1-2(2)④)(45-1-1(3))
気象予報士試験では相当温位を数値で表さずに、「高相当温位」と表現するのが好みのようです。
「高い」相当温位とは何K以上を指すのかが問題です。これは季節によって異なりますし、北か南かという緯度によっても異なります。
表3は、何Kを高相当温位としているかを過去問題から拾ってきたものです。
どの時期、地方であっても345K以上は高相当温位です。
11月の華中の321Kは微妙です。数値のみに頼らず、風向きにも注意しましょう。南寄りの風が吹いていれば「高相当温位」と判断します。
③位置
最後は、特徴的な場のどのような位置にあるかです。こちらも早速、出題事例を見てみましょう(表4)。
圧倒的に「縁」(ふち)と「端」(はし)が多いのが分かると思います。
【高気圧(の縁)】(40-2-1(2)④)(42-1-2(1)①)
高気圧の中心部は乾いた下降流により、好天になるというイメージがあります。
しかし、高気圧の南側や後面では雨になることがあります。高気圧の中心から離れた南側の縁では湿った空気が流れ込みます。このような風を「高気圧の縁辺流」とか「高気圧の縁を回る風」と呼びます。
実例を見てみましょう(40-2-1(2)④)。西日本は高気圧の後面に入っています(図8)。赤い破線部では高気圧の縁を回る湿った風が吹くため、雨が降りやすくなります。
高気圧の縁辺流はこの事例のように、日本の南海上や北東気流のような一定規模のスケールのものが取り上げられます。
それに比べると規模が小さいのが次の事例(42-1-2(1)①)です(図9)。
赤い破線部分は高気圧の南にあります。500hPa天気図を見ると上空に寒気が入る見込みで、雨が降る予想になっています。
最後に
降水域や雲域などの現象が現れている原因を考えることは、天候のその後の推移を予想するために大切です。今回出てきた表現方法は、日常の気象解析でも実況監視で役に立ちます。
表1、表2、表4の表現がすべてではありませんが、繰り返し見ることで場を読み取る目を養っていただきたいと思います。
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分かり易い説明、解答の導き方・書き方をありがとうございました。頭の中で整理が出来ました。
試験まであと1ヶ月ですね。頑張ってください!
わかりやすい解説ありがとうございます。
基本的なことをお伺いして恐縮ですが、50-1-2(3)②で降水域の極大域が、等相当温位集中帯にあるのに解答が「相当温位の極大域付近で風の強いところ」となるのでしょうか?
相当温位集中帯と極大域の使い分けが理解できていないのだと思いますので、使い分けをご教示いただけないでしょうか?
「集中帯」と「極大域」の使い分けについてのご質問ですね。
私の理解している範囲でお答えしたいと思います。
「集中帯」は、等位線(等温線や等相当温位線)が混み合っている状況です。
「帯」というぐらいなので、混み合った状態が同じような幅で漫然とのびているイメージです。
「極大域」は「周囲と比べて大きい領域」という理解をしています。
暖湿気が強い風で突っ込んでくると、等相当位線がそこだけ北方向に尖(とが)ります。
その先端部付近を「相当温位の極大域」と呼んでいるのだと思います。
集中帯であることには相違ないのだけど、ある特定の形状で特定の領域に集中しているので、
何らかの現象を引き起こしそうな状況です。
例えば、北よりの風が等相当温位線の集中帯を横切れば、寒気が移流します。
それに対して、豪雨の時に見られる「湿舌」の先端部はまさに「相当温位の極大域」に相当し、
そこでは顕著現象が発生しそうですよね。
なお、「相当温位の極大域」という表現は、試験以外では聞いたことがありません。
問題への解答としては「暖湿気が強い風で流入するところ」でも良いのではないかと思います。
早速、ご返信ありがとうございます。
50-1-2(3)②で、前12時間降水量予想の極大位置を「等相当温位集中帯で風のシアが見られる」と回答した場合は、間違いとされるのでしょうか?
何度も申し訳ありませんが、ご教示のほど、よろしくおねがいします。
問題文には「24時間予想図の降水量予想の極大の位置はどのような場所か」とあり、降水の最も強い場所を問われています。
「降水の位置はどのような場所か」であれば「等相当温位線の集中帯」でも可でしょうが、「降水量の極大位置」を問われているので、問題文の「極大」に呼応して「極大域」を使って答えるのがコンパクトです(その意味で、私の先の解答にある「暖湿気が強い風で流入するところ」も満額回答ではないですね)。
また、シアについては風向や風速の変化に伴う収束や発散を表すのに用いられ、移流の強さの表現としては「風が強い」「風が弱い」が使われるように思います。
問題の主旨とその回答の適合性を解説いただき、大変、よくわかりました。
また、いろいろな視点で、視点等をわかりやすく記載いただき、大変、参考になりました。
ありがとうございました。
素敵なコメントをありがとうございました。
良い記事を書くことができるよう、引き続き頑張りたいと思います。
いつも丁寧な解説有難うございます。
「リッジ内の正渦度域とは逆に、「トラフ内の負の渦度域」があります。これは、低気圧圏内の中の発散域で好天をもたらします。」
で質問ですが、よろしくお願いいたします。
①リッジ内の正渦度域では対流が発生して、正渦度になっているとなっていると理解しているのですが、それでよろしいでしょうか。
➁トラフ内の負の渦度域ですが、「低気圧圏内の中の発散域」がイメージできません。低気圧中心後面の下降流なのでしょうか、降水による下降流でしょうか。まったくイメージできません。
よろしくお願いいたします。
とても良い質問だと思います。渦度移流域、渦度域、上昇流・下降流の関係は予報士の参考書でははっきり解説されていないため、モヤモヤしますね。
45-1-1(3)の出題は2014年7月9日の梅雨期の事例で、リッジ場に正渦度域があり、積乱雲が発達している状況を読み取らせる問題です。
天気図が入手できれば見ていただきたいのですが、日本海には正渦度域に沿った梅雨前線があります。そしてリッジに対応する太平洋高気圧が日本の南岸まで張り出し、高気圧の縁を回る下層暖湿気が前線に向かって流入しています。このため、上空の寒気の影響もあり暖湿気が上昇して対流雲が発達したと思われます。
一般には、晴れるか曇るか(雨が降るか)を考える上で大切なのは大気の鉛直運動です。大気が上昇して水滴が凝結すると雲が発生します。逆に下降すると水滴が蒸発して雲は消滅します。
リッジ場でも上昇流があれば天気は悪くなるし、トラフ場でも下降流があれば天気が良くなるということです。
鉛直流は上層(下層)の発散・収束、渦度移流、温度移流の相互関係で決まります(これを理解するには大気力学の理解が必要です)。
上層の収束、下層の発散があると下降流が生じるため、晴れる傾向にあります。
逆に、上層の発散、下層の収束があると上昇流が生じるため、曇る傾向にあります。この状況は正渦度移流と相関があります。
① の質問への解答:
正渦度移流域(正渦度極大点が移流してくる領域)は上昇流と対応があります。
正渦度域の中に正渦度移流域が含まれますが、正渦度域の全域にわたって上昇流が生じるわけではありません。
② の質問への解答:
日本海低気圧と南岸低気圧が同時に発生する二つ玉低気圧を考えると良いと思います。二つの低気圧の間に下降流が生じるため、「擬似好天」と呼ばれる短時間の晴天をもたらします。
余談ですが、「リッジ場の正の渦度域」は第45回試験に出題され、「トラフ内の負の渦度域」は「天気図のみかた」(東京堂出版)に記載があります。しかし、それをどう解釈すべきかは解説はされていません。ある講習会でまったく同じ質問を受けた気象庁OBの方も「分からない。イメージがわかない。」と解答されていたくらいなので、あまりこだわらない方が良さそうです。
私の解答をお読みになって、また疑問がわいてくるのではないかと思います。ご自身でも考えたり調べていただいて、分からないときはまたおたずねください。
早速のご回答ありがとうございます。お忙しい中、恐縮いたします。
①に関してですが、強い対流の発生によって正渦度が形成されたということでよろしいでしょうか。
天気図を見ていますと、積乱雲が発生しているところに、三桁の値の正渦度極大値があるのですが、
これも強い対流に対応したものととらえてよろしいのでしょうか。
その逆ですが、強い降水エコーがあるところに、二から三桁の負渦度極大値があります。この極大値は
強い降水による下降流が要因なのでしょうか。または冷気外出流、ダウンバースト等が要因なのでしょうか。
➁についいてですが、分かりやすいたとえ、「擬似好天」有難うございます。
結果には、それに対応する要因があるのですが、「擬似好天」等の下降流場と納得しました。
どうも、正渦度と負渦度の分布をみていると、いろんな疑問がわいてきます。単なる、いろんな本に記述
がある曲率や速度差ではないところがあります。ご丁寧な回答ありがとうございます。
質問が前回と同内容なので解答も前回と同じになりますが、数点補足します。
・500hPa面の正渦度は流れの曲率か風の水平シアのあるところに算出されます。
・鉛直流の強さは700hPa面の鉛直p速度から判断します。
・対流雲が発達するのは大気の成層状態が悪い場合で、下層の暖湿気移流や上層の寒気の状況、エマグラムなどから判断します。
・質問の文脈では、対流ではなく上昇流という用語を用いた方が良いと思います。
渦度は値の大小よりもその変化の方が大切です。
Shokubutuzukanさんは渦度、渦度移流、鉛直流の理解が不足していると思われます。前回にお答えした内容を再度よくお読みください。
ご丁寧なご回答、ご指導有難うございます。
渦度、渦度移流、鉛直流の関係が今一つ理解できていない現状です。
梅雨前線の付近に出来る、正渦域と負渦度域が交互に帯状に並んでいるのをみて
その要因が未だわからない現状です。
迅速なご指導に感謝いたします。
私は自分の疑問を解消するために総観気象学を独学しています。
数式が多かったりイメージが湧きにくなったりと手強い学問ですが、現実の気象は理論通り展開しないところがまた悩ましいところです。
shokubutuzukanさんも抱いている疑問を書き出しておいて、今後もそれを解消する努力をされることを期待します。
経験を重ねてくると、私の解答に対する理解度も変わってくるものと思います。
以下の記事も参考にしてみてください。
https://kishounomoto.com/2021/03/24/トラフと渦度の使い方/
https://kishounomoto.com/2020/11/27/発達する低気圧を読む/
ご指導をいただき、考えを初期化して、「上昇流、水平シア」に注目して、「総観気象学」をあちこち見ていて、あるキーワード「ジェットストリークの入口」を見つけました。
強い降水域付近に負渦度域が重なる件ですが、正解かどうかはわかりませんが一つの答えが見つかりました。
比較的重なるのは、強い線状降水帯の事例ですが、キーワードは、「ジェットストリークの入口」です。その南西側(右側)には上昇流を助長するソーヤ・エリアッセン循環があり、この下層で、重大な土砂災害になる強雨、大雨をもたらす線状降水帯が形成されることがあります。当然そこは、ジェットストリークの入り口の右側ですから、強い負渦度域になります。 必然的に重なります。
梅雨前線付近の交互に並ぶ、正渦度域、負渦度域も考えを初期化したら答えが見えてきました。正渦度域と負渦度域の成因が同じではないのに気が付きました。
疑問のモヤモヤが少し和らぐかもしれません。有難うございました。
よく勉強されていますね。
予報士試験では大気の流れの曲率に伴う正渦度(トラフ)の移流がよく出題されますが、ジェットストリークに伴う発散は水平シアに伴う正渦度の移流をもたらします。
冬の終わりから春先にかけて、南西諸島では5,700m付近の強風軸に沿って前線が発生することが多くなります。強風軸の上空にはジェットが流れていて、まさにご指摘のようなジェットストリークの入り口で非地衡風による発散が上昇流を励起した結果と考えられます。
この前線上で低気圧が発生して南岸低気圧になることもあります(2022年2月19〜20日の例)。今日(2022年2月22日)も夜には南西諸島で前線が発生しそうな状況です。
寒帯前線ジェット気流に対応する、華南付近の前線帯の情報ありがとうございます。
トラフ内の負渦度域ですが、これも正解かどうかはわかりませんが、答えが一つ浮かびました。注目したのは「二次循環」です。要約すると、
「気温の水平傾度があると温度風の関係で上ほど地衡風速が増加する。低気圧が発達して水平温度傾度が強められると、上層の地衡風が強まる。この時、空気塊は気圧の高いほうから低いほうに等高線を横切って移動する。つまり、気温傾度の大きくなる前線帯を挟んで暖気側では上昇流、寒気側では下降流になる二次循環が生じている。上昇流があるところの下層と下降流のあるところの上層では、水平収束が生ずる。」
ということは、この寒気側での下降流に注目すると、その下降流の発散により負の渦度が生じ負渦度域が分布することになります。トラフ内の負渦度域は、そのトラフに対応する地上低気圧の発散域という説明にも矛盾しません。
この調子で勉強を続けてください!
お言葉有難うございます。
「強い降水域付近と負渦度域が重なる件」で、寒帯前線ジェット気流付近のジェットストリーク入口を GSM天気図で見ていて、一つ気が付きました。
強い降水域は 非地衡風による発散域ですが、渦度の観点でよく見ると、負渦度極大域になっています。降水域が北東から南西に帯状に分布しているとすると、その北東側付近に負渦度極大値があり、南西側は負渦度の絶対値が次第に減っていきます。
つまり降水域は、負渦度の正の渦度移流域 になっていますから、正渦度の正の渦度移流同様に強い上昇流が発生します。線状降水帯や強風軸に沿った前線付近の強い降水帯の一部は負渦度の正の渦度移流域に発生すると考えられます。
相変わらず、渦度、渦度移流、鉛直流の理解は不足している現状なので、正解かどうかもわかりませんが、モヤモヤが少し和らいでいる気がします。