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目視観測の自動化が試験に与える影響

気象庁は目視観測の自動化を段階的に進めています。最近では令和2年(2020年)2月に39地点で自動化されていますが、令和6年(2024年)3月に新たに9地点で自動化が予定されています。
→3月26日06UTCのASASから対応が始まりました。(2024.3.27追記)

これにより、2024年3月末以降、有人観測が行われるのは東京と大阪の2地点のみとなります。

今回は、この動きが今後の試験問題に与える影響を考えます。あくまでも私の予想ですので、この記事の情報をもとに、最終的な判断はご自身でお願いします。

※以下の説明では、令和2年の自動化を「R2自動化」、令和6年の自動化を「R6自動化」と呼びます。

 

自動化の概要

観測通報の自動化とは、これまで気象台や測候所の職員が目視で実施してきた観測通報が、器械やレーダー、気象衛星により直接的な人手を介さずに行われることです。

観測通報が自動化されることにより、以下の観測が終了します。

<自動化で終了する観測>

天気:快晴、薄曇
大気現象:大気水象(14種類)、大気じん象(6種類)、大気光象(4種類)、大気電気象(雷光、雷鳴)
雲:雲の観測すべて
出典:「地方気象台における目視観測通報を自動化します」(東京管区気象台、R6.2.9)
ただし、大気現象の項目の( )内は筆者がまとめて表記しました。


なお、下記の天気や大気現象の項目は自動観測で継続されます。

 晴、曇、雨、雪、みぞれ、霧、もや、煙霧、雷

目視観測作業の映像はこちら↓

 

気象通報に関する出題

観測に基づく気象通報の問題はほぼ毎回、「問1」の中で国際天気記号の読み取りとして出題されています。

具体的には「雲」「天気」「気圧変化」「気温」に分類することができます。

過去に出題された観測地点

第40回から第61回までの22回の試験問題から、国際天気記号の読み取り問題に出題された観測地点を調べてみました。地点名に続く( )内の数字は登場回数を表します。

根室(1)、釧路(1)、秋田(4)、東京(4)、八丈島(1)、父島(2)、
輪島(1)、松江(2)、潮岬(1)、
福岡(1)、鹿児島(13)、名瀬(5)、
那覇(2)、石垣島(2)、チェジュ島(3)、ウルルン島(1)、その他(3)

登場する地点は西高(多)東低(少)で、近年は特にその傾向が強まっています。また、地点別では鹿児島が圧倒的に多く、名瀬、東京・秋田と続きます。

雲の問題

雲の記号の一例を図1に示します。

図1 雲の形の記号と雲量

 

雲の問題は雲の名称を問うものと、雲量に関するものに分かれます。

雲の名称を問う問題は、国際天気記号からCH(上層雲)、CM(中層雲)、CL(下層雲)別に雲の記号から雲の種類を読み取るものです。

雲の雲量の問題では、CL(CM)の雲量を読み取るものと、地点円に示された全雲量を読み取るものがあります。また、雲量から天気を答えさせる問題もあります。例えば、全雲量が8分量で7であれば、「晴れ」になります。

天気の問題

天気記号から天気を問う問題です。天気記号の例を図2に示します。

図2 天気記号

 

WMOの国際天気記号は、観測所を「有人観測所」と「自動観測所」に分けています。

また、天気には「現在天気」と「過去天気」があります。有人観測所の現在天気(ww)と過去天気(W1)、自動観測所の現在天気(wawa)と過去天気(Wa1)になります。

過去の出題はほとんどが有人観測所の天気記号ですが、少数ながら自動観測所の天気記号も出題されています。

気圧変化・気温の問題

省略します。

 

今後の出題に与える影響

R2自動化による試験の影響はすでに出始めています。

まずは図3を見てください。これは第61回(令和5年度第2回)の実技1と実技2で出題された天気図の一部です。

図3 第61回試験に出題された地上天気図

観測点名の青い吹き出しは有人観測、赤い吹き出しは自動観測を表します。

同じ回の出題でも、R2自動化の実施後は同一観測地点でも自動観測になっていることが分かります

雲の問題への影響

「自動化の概要」でも記したように、自動化された地点では雲の観測がされなくなります。雲量も雲形も観測されないため、自動化された地点では国際天気記号から雲の表記がなくなります(図3参照)。

これに伴い、現在は毎回のように出題されている雲の記号を読み取る問題が、徐々に出題されなくなることが予想されます。

R2自動化が実施された2020年以降の試験、すなわち第54回試験(2021年1月実施)から現在に至るまで、国際天気記号の問題はR2自動化が実施される以前の天気図、もしくはR2自動化の影響を受けなかった鹿児島、韓国(チェジュ島、ウルルン島)が出題されてきました。

今後もしばらくはR6自動化実施前の天気図が出題されるでしょうが、いずれは有人観測が継続される東京、大阪か、これまでに出題されたことのある韓国(チェジュ島、ウルルン島)及び中国大陸の観測通報になると思われます。

当面は雲の記号をしっかりと学習する必要があります。

現在天気・過去天気の問題への影響

現在天気、過去天気を読み取る問題もほぼ毎回出題されていますが、そのほとんどが有人観測所の記号であり、自動観測所の記号読み取りは少数でした。

【自動観測所の出題例】(第40回以降)
42-1(根室)、47-1(八丈島)、57-2(輪島)、59-2(潮岬)

R6実施以降は、次第に自動観測所の天気記号を読み取る問題が増えていくと思われます。

注意が必要なのは有人観測と自動観測では、同じ記号でもその意味が微妙に異なるものがあることです。

問1では「しゅう雨性降水」に関連する天気記号がよく出題されます。例えばこちらです(図4)。

図4 ww=80, wawa=81の現在天気記号

 

これは、有人観測の現在天気では「しゅう雨,弱。」(ww=80)ですが、自動観測の現在天気では「しゅう雨又は観測時前1時間内に止み間があった雨,弱。」(wawa=81)となります。

今までは「自動は出題されないから放っておこう」という山かけもできましたが、今後は有人・自動の両方の記号を学習する必要が出てきます。

気圧・気温の問題への影響

自動観測でも気圧と気温の表示は変わらないため、出題にも影響はないと思われます。

 

影響の出始める時期

試験に出題される天気図は、新しいものだと試験日の1年半前程度のもの、古いものだと5年ほど前のものです。例えば第57回試験(2021年1月実施)では2019年6月の天気図が出題されています。

これを踏まえると、R6自動化に基づく出題は早くても第64回(2026年1月実施見込み)になると予想します。これ以降しばらくは新旧のルールに基づいた出題が混在すると思われます。

受験される方の負担は増すことになります。学習に力を入れて早期合格を目指してください。

【参考】
配信資料に関するお知らせ 〜地方気象台及び測候所における目視観測通報の自動化について〜(気象庁観測部、令和元年12月26日)
配信資料に関するお知らせ 〜 気象官署の目視観測通報の自動化について 〜(気象庁大気海洋部、令和6年2月9日)

 

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