前線解析の考え方
将来時刻における前線解析の一般的な手順は、前線構造が明瞭に現れる850hPa天気図で前線を解析した後、地上天気図に転記します。
過去の出題でもこのパターンが最頻出です。
①じょう乱の移動先を判断する
本記事が対象にしている第59〜55回より以前の出題では停滞前線の解析が問われたこともありますが、一般にはじょう乱からのびる寒冷前線や温暖前線の解析が大半です。
したがって、前線を解析する時刻におけるじょう乱(低気圧、気圧の谷)の位置を探すことが先決になります。
②850hPaの前線を解析する
次の3項目を軸に850hPaの前線の位置や形状を把握します。
- 等温線や等相当温位線の集中帯の南端
- 風のシアー
- 温度移流(寒気・暖気)の有無
③地上の前線を記入する
地上前線を解析するには850hPa前線をそのまま転記するのではなく、次を考慮します。
- 地上の気圧の谷を通す
( 紛らわしい気圧の谷に通さないよう注意) - 地上の風のシアー
- 前の時刻の前線との連続性(試験では省略されることも多い)
寒冷前線と温暖前線に伴う典型的な風向を図2に示します。このイメージを持っておくことが大切だと思います。
じょう乱の移動先判断
実況で解析されているじょう乱の将来時刻における前線を記入する問題では、そのじょう乱がどこに移動するかを把握することから始めます。
じょう乱の移動先は問題で与えられる場合と、与えられない場合があります。
傾向
前線記入の問題では、「〇〇日××時に日本海中部にある低気圧に伴う前線の24時間後の予想位置を記入せよ」のように、注目する低気圧の将来時刻の前線を記入させるのが一般的です。
しかし、将来時刻の天気図に低気圧が解析されているとは限りません。過去に出題された実況と将来時刻のじょう乱の種別を表1にまとめます。
①じょう乱の移動先が与えられる場合
実況のじょう乱が低気圧でない場合、将来時刻のじょう乱の移動先が与えられます。
59-1-2(3)(表1の通番1)を見てみましょう。
「17日9時の実況で東シナ海にあった前線上の波動(図3(a))は12時間後には対馬海峡に進み低気圧に発達し、その後36時間後にかけて本州付近に進む予想」です。
問題文には「18日9時に紀伊半島に予想される地上低気圧に伴う温暖前線と寒冷前線を記入せよ」とあるので、日本海に予想されている別の低気圧と混乱するおそれはありません(図3(b))。
②じょう乱の移動先が与えられない場合
実況図に低気圧が解析されている場合、将来時刻の移動先は与えられません。実況図に書かれた低気圧の移動速度・方向をもとに、移動先を判断する必要があります。
<事例1>(T=0)低気圧→(FT=12)低気圧
58-2-2(3)(表1の通番3)では、T=0で黄海にあった低気圧が、FT=12では閉塞して沿海州に進む予想です(図4)。
<事例2>(T=0)前線上の波動→(FT=24)気圧の谷
59-2-2(3)(表1の通番2)は、「台湾海峡付近から沖縄の南にかけてのびる前線上に発生する低気圧に伴い東進する温暖前線と寒冷前線を(中略)記入せよ」という問題です(図5)。
T=0で南西諸島にあった前線上の波動は、FT=24では関東の沖合の気圧の谷として予想されています。
この問題の嫌らしいところは、問題文に「前線上に低気圧が発生する」とあるのに、FT=24の天気図にはその低気圧が解析されていないことです。「気圧の谷からのびる前線を記入せよ」としてほしいところです。
<事例3>850hPaの前線の連結部
850hPa面の予想天気図では、風向から低気圧性循環を見つけてその中心を温暖前線と寒冷前線の連結部とします。
56-2-1(4)③(表1の通番8)は、地上天気図の日本海北部にある低気圧に対応する850hPa面の前線解析問題です(図6)。
対策
実況図のじょう乱の移動先を追跡する
将来時刻の天気図に明瞭な低気圧が解析されていても、それに飛びついてはいけません。
実況図に低気圧が解析されている場合は、移動の速度・方向が記入されています。これは前6時間と今後の移動を考慮して求められています。これを利用して将来時刻の移動先を予測します。
<事例1>(図7に再掲)では、実況図の低気圧が35ktで北東に進んでいました。35ktは12時間で緯度方向に7度進む速さなので、実況の低気圧の位置から北東に緯度7度程度離れたところのじょう乱(低気圧もしくは気圧の谷)を探します。
移動速度が50ktなら12時間で緯度10度ぶん、24時間で緯度20度ぶんを移動します。ただし、24時間後には移動方向はずれてくるおそれがあるので、あくまでも目安です。
850hPaでは低気圧性循環に着目する
850hPa相当温位・風の予想図に前線を記入する場合は、じょう乱の位置(温暖前線と寒冷前線の連結部)を低気圧性循環から判断します。
<事例3>(図8に再掲)では、赤破線の中に反時計回りの低気圧性循環が見られます。10ktの南南西風と10ktの東北東の風に着目すると、循環の中心を判断することができます。
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