前回は主として上空の気圧の谷の影響により曇りになる事例を見ました。
今回は別の原因で高気圧に覆われていても曇りになるケースを考えてみます。
【図の出典】
トップ画像 東京の空 ライブカメラ
図1 気象庁の天気予報を加工して作成
図2 ウェザーニュース
図3、4 気象庁の天気図を加工して作成
図5 気象庁
図6 earth
図7 東京学芸大学気象情報頁を加工して作成
天気概況(2022年11月28日)
2022年11月28日4時39分発表の東京都の天気概況を見てみましょう(図1)。
「28日は、高気圧に覆われますが、気圧の谷や湿った空気の影響を受ける見込みです。このため、曇りでしょう。」とあります。
気象予報会社は各社とも終日曇りの予報となっています(図2)。
「高気圧に覆われるが、曇り」になるのはなぜでしょうか?
まず、前日の11月27日12時の天気の状況を確認します。日本海中部に中心を持つ高気圧に覆われて、西日本から東日本にかけては概ね晴れています(図3(a))。
一方、11月28日12時には高気圧は日本の東に移動し日本を覆っていますが、東日本の太平洋側では曇っており、東海では降水が確認できます(図3(b))。
トップの画像は同日15時の都内の画像で、どんよりと曇っています。
高気圧に覆われているのに、高気圧が東に移動しただけで前日と比べて大きな違いになっています。
高気圧後面の湿った空気
高気圧からは時計回りの風が吹き出しているので、高気圧が日本の東海上に移動すると海上の湿った空気を日本の太平洋側に送り込んできます。馬が後ろ足で砂をかけるようなイメージですね。
風の状況を見てみましょう。図4は11月28日9時の850hPaの相当温位と風の予想図です(初期値11月27日21時)。
850hPaの高気圧の中心は、地上と比べると南西に位置しています。
赤い矢印で示したように、東海道沖から四国おきにかけては高気圧から吹き出す南東〜南の風が海から入る予想になっています。
特筆すべきなのは、東海道沖では315Kの等相当温位線が北に盛り上がっており、暖湿気が流れ込む状況です。
なお、この日の海面水温の状況を見ると、日本の南海上では24℃だったことが分かります(図5)。
地上風の流線もみておきます(図6)。
東海道沖から九州にかけて高気圧の後面の風が吹いているのが分かります。
下層暖湿気が流れ込むだけでは雨や曇りになるとは限らず、地形性上昇や前線など風の上昇する要因が必要です。
東海道沖で風向が変化しているのが気になるので、局地解析をしてみます(図7)。
東海道沖に気圧の谷があり、ここで収束した風が上昇して降水をもたらしたようです。
最後に
高気圧が日本の東海上に抜けて日本が高気圧の後面に入ると、湿った空気が流れ込んだ東日本の太平洋側では曇天になります。
今回の事例では、局地解析により東海道沖に気圧の谷があり風が収束したことで雨をもたらしたものと思われます。
高気圧後面の下層暖湿気の流入は移動性高気圧や夏の太平洋高気圧でも頻繁に発生するので、ぜひ覚えておいてください。
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