波浪に関する出題の頻度は高くありませんが、ポイントを押さえるだけで得点源になります。
試験直前からでも間に合いますので、ぜひお読みください。
高波の基本知識
波浪(風浪+うねり)
風浪とうねりを合わせて波浪(波)といいます。
防災上、高い波は高波と呼ばれ、波浪警報や波浪注意報の対象になります。
波浪警報・注意報は高波による遭難や沿岸施設の被害など、重大な災害または災害が発生するおそれがあると予想したときに発表され、発表基準は区域ごとに有義波高で定められています。
例えば、波浪警報の発表基準は沿岸地域では6.0mのところが多いですが、試験では基準値が与えられるので覚える必要はありません。
※津波について
波浪は風により生じますが、津波は海域で大地震が発生することで生じる波です。波浪とは発生メカニズムが異なるので、津波は波浪ではありません。
風浪
風浪はその場所で吹いている風により生じる波です。
波高の大きい風浪は波高に応じて、しけ、大しけ、猛烈なしけという名前がついています(表1)(試験の頻出項目!)。

うねり
うねりは遠くで作られた波が伝わってきたものです。
かつて風でつくられた風浪が、風が止んだ後に短周期成分が減衰し、長周期成分だけの波だけが伝わってくるものです。したがって、周期が長いのが特徴です。
風浪とうねりの見分けはよく出題されます(試験の頻出項目!)。ポイントは卓越波向と風向、卓越周期です。
うねりは「卓越波向と風向が一致しない波」、あるいは「卓越波向と風向が一致しても、卓越周期が8秒より長い波」で判断します。これ以外は風浪と判断します。
うねりは遠くから伝わってくるため、好天時や風が強くなくても突然、高波がやってきます。また、波の周期が長く、海岸では地形などの影響を受けて波高が増大しやすいため、釣りや遊泳中の事故が多くなります。
風浪の発達
風浪の波高が高くなることを「風浪が発達する」と言います。
風浪が発達する条件は3つあります(試験の頻出項目!)。
【風浪が発達する条件】
①風速
風が強いこと。風速が大きいほど波は高くなります。
②吹走距離
一様な風の吹く距離が長いほど、風浪は発達します。
「吹送距離」と表記されることもあり、「吹走」「吹送」のどちらも正解とされます。ちなみに、気象業務支援センターの解答例では「吹走」が使われています。
③吹続時間
一様な風の吹き続ける時間が長いほど、風浪は発達します。
試験では少しひねって出題されますが、ポイントは以上の3点に集約されます。
沿岸波浪図の読み方
沿岸波浪実況図、沿岸波浪予想図(以下、「沿岸波浪図」)は、日本近海の数値波浪モデルの解析結果を図示したものです。
沿岸波浪図の読み取り
沿岸波浪図から風向、風速、波高、卓越周期、卓越波向を確実に読み取れるようにします(試験の頻出項目!)。
合わせて、先述の波浪表(表1)に従って、波高からしけ・大しけ・猛烈を判別できるようにしておきます。過去には大しけ以上が予想される海域を地方予報区名で選ばせる出題があったので、地方予報区が曖昧な方は地図で復習しておいてください。
地方予報区:北海道、東北、関東甲信、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州北部、九州南部・奄美、沖縄
波高の読み取り

波高は1メートルごとに等波高線で表示されます。数値は有義波高(メートル)です。
等高線は4メートルごとに太実線になっています。
等波高線の間隔が広いところでは、0.5メートルごとの破線が表示されます。
図1は西日本の沿岸を中心とした波浪図です。紀伊半島から伊豆半島の沿岸にかけてしけ(波高が4〜6メートル、青色で表示)や大しけ(6メートルより大、赤色で表示)となっています。
卓越波向、卓越周期の読み取り

卓越波向は波がやってくる方位のことで、白抜きの矢印で表示されます。
卓越周期は卓越波向の近くに、小さい数字(秒)で表示されます。
図2において、点Aの卓越波向は南南西、卓越周期は9秒です。風向は西南西です。卓越周期が8秒より長いことと、卓越波向と風向が異なることから、うねりの成分が大きいと考えられます。
点Bの卓越波向は南西、卓越周期は9秒です。風向は南西で卓越波向とほぼ一致しますが、卓越周期が9秒と長いため、やはりうねり成分が大きいと考えられます。
実例
関東の東に台風が接近したときの沿岸予想波浪図(24時間)と、そのときの天気概況と気象警報を図3に示します。

台風の前面の風向と卓越波向に注目すると、風向と卓越波向は一致していません。また、周期が12秒と長い波も予想されており、これはうねりが卓越していると思われます。波高は6メートルです。
この日の千葉県の天気概況には「うねりを伴い大しけとなる」「高波に警戒」とあり、9時から18時までは波浪警報、それ以降は波浪警報が発表されています。
過去問題の研究
過去の出題(第38回〜55回で5問)は、
①沿岸波浪図の読み取り
②卓越波向や波高の状況(その要因)の説明
③時間の経過に伴う波高、波向の変化の理由、2地点間の波高の違いの理由
④その他
に分けられます。
①は前項「沿岸波浪図の読み方」で学びました。
④は警報発表基準値とガイダンスから警報の発表時間帯を特定する問題(41-2-1)と、うねりの移動距離の計算(43-1-4)ですが、素直に解ける問題です。
以下では②と③を見ていきます。
時間経過に伴う卓越波向と波高の変化(41-2-5)
【問題】
図4は2月11日21時(12UTC)を初期値とした沿岸波浪の12、24、36時間予想図で、風向、風速、波高、卓越波向、卓越周期の予想値が表示されている。これと図5を用いて以下の問いに答えよ。


(1)図4の北海道東方に示す点Pにおける12時間後から24時間後にかけてと24時間後から36時間後にかけての卓越波向と波高の状況を、卓越波向は8方位、波高は最も近い整数値で、それぞれ30字程度で述べよ。
(2)点Pの波が、12時間後から24時間後にかけてと24時間後から36時間後にかけて上記のような状況となる要因を、図5に見られるじょう乱との位置関係と点P付近の風速の値を示して、それぞれ30字、40字程度で述べよ。
【考え方】
(1)
卓越波向と波高の変化を読み取ってそのまま書けば良い、単純な問題です。その解答が次の設問(2)につながります。
12時間後と24時間後の卓越波向は16方位では東北東と読み取れますが、8方位で答えさせる問題です。北東か東か、微妙な感じです。
(2)
卓越波向の変化は、じょう乱が接近するか遠ざかり風向が変化することと関係します。
波高変化の原因は「風速・吹走距離・吹続時間」のいずれかです。「吹続時間が長いため」「風速が強まるため」のようにキーワードを用いて答えたいところです。しかし、「じょう乱との位置関係と点P付近の風速の値を示して」という問題文の指示にしたがうと字数オーバーになるので、表現に工夫が必要です
沿岸波浪図で50ノットの風は白色のペナントで表現されます。
【解答】
(1)
12時間後から24時間後:卓越波向は北東で変化がないが、波高は2mから5mに高まる。
24時間後から36時間後:卓越波向は北東から西に変化し、波高は5mから6mに高まる。
12時間後から24時間後:低気圧が接近し、25〜35ノットの北東風が持続するため。
24時間後から36時間後:低気圧が通過し、風向が北東から西に変化して最大50ノットの暴風が吹くため。
2地点間の波高の違い(49-1-5(2))
【問題】
図6を用いて以下の問いに答えよ。

①地点イにおける、風向、風速、波高、卓越周期、卓越波向を答えよ。ただし、風向および卓越波向は16方位で、その他は単位を付した整数値で答えよ。
②地点イ付近の波高が地点ア付近より大きい理由を20字程度で述べよ。
【考え方】
問題文には、図6がどの海域を示しているのか記載がありません。これが分からないと、本問の解答は困難です。
せめて緯度・経度が記されていれば分かるのですが、不親切な出題です。
手がかりとしては、図の右端に2mの波高を中心に等波高線が集中しているので、「ここは陸地ではないか?」と推測できると、ここが九州であることに気付きます。

図7に、図6の示す海域を赤枠で示します。中国大陸を茶色で塗ってあります。
波高の違いは「風速・吹走距離・吹続時間」のいずれかが原因です。
地点ア、イのいずれも風向は北西もしくは北北西、卓越波向は北北西で揃っているので、大陸から両地点までの距離の違いに着目します。
なお、本問は1月の事例なのでこの風は季節風によるものです。沿岸波浪図を見ただけでも、海上には筋状の雲が発生していることが予想できます。
【解答】
(2)
地点イの方が海上での風の吹走距離が長いため。
最後に
高波の問題は他の問題と連動することがなく、独立しています。そのため、試験会場で試験の終了時刻が迫っても手を付ければ、得点に結びつけることができます。
あきらめないで、ぜひ頑張りましょう!
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気象予報士の専門テキストの中に「波がやってくる方位を卓越波向といい、波の進行方向は卓越波向とは180度反対になる」
の記述があったのですがその意味が分からない。
文末に間違いがあったので訂正して再送信しました。
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閲覧いただきありがとうございます。
テキストの文脈が不明ですが、おそらく波のやってくる方向と波の進んでいく方向のことだと思われます。
風を例にとると、西風は西から東の向きに吹きます。この場合、風向は西で風の進む向きは東です。
同様に、西からやってくる波は波向は西で、進む向きは東になります。