エマグラム(2)エマグラムの概要

  • 知識

(修正)2021.5.6

エマグラムについて理解する連載の2回目です。

前回は空気塊と周囲の大気について分けて考えることを学びました。

今回はエマグラムについてザッと目を通します。エマグラムでは何を読み取ることができるのか、またエマグラムを読むときに注意することを確認しましょう。

 

エマグラムの構成

エマグラムは大気の状態の鉛直分布が分かるように、専用の用紙の上に作図したものです(図1)。

かつては「気象庁エマグラム (1969年版予報天気図用紙801号)」という指定用紙があったようです。市販もされていたようですが、現在は入手はできないです(多分)。

図1 エマグラム

エマグラムの用紙には事前に印刷されている軸(縦、横)、目盛り、そして縦、横、斜めの線があります。斜めの線は数式により理論的に求められたもので、大気の成層状態を判断するときに使います。

一方、この用紙に後から記入されたものとして状態曲線風の鉛直プロファイルがあります。これらは高層観測による実測値です。

状態曲線は文字通り、大気の状態を表す曲線で、気温露点温度が代表的なものです。他には相当温位や温位が記入されたものもありますが、試験に出題されたことはありません。

風の鉛直プロファイルは下層から上層にわたる風力と風向きを表します。上層に向かって回転する向きから、温度移流を判断することができます。なお、風の鉛直プロファイルは記載されていないこともあります。

 

エマグラムで分かること

エマグラムからどんなことが読み取れるのか、過去の出題で問われた内容からまとめてみます。

読み取り方の詳細はこの先の回で説明しますので、ここでは「こんなものなのか」と思ってもらえれば十分です。

雲の高度

  • 雲底高度
  • 雲頂高度

気温と露点温度の差(湿数)を見ることで、雲底高度や雲頂高度を知ることができます(図2)。

図2 雲頂高度と雲底高度

 

逆転層

  • 逆転層の高度(上端、下端)と気温
  • 逆転層の種類(接地、沈降性、前線性)

逆転層は高度とともに気温が上昇する層です。成層状態が安定しているので、安定層を超えた対流は発生しません。

逆転層の高度や空気の湿潤・乾燥状態を見ることで、逆転層が形成された要因を推測することができます。

 

前線

  • 温暖前線面の高度

温暖前線は、冷たい空気の上に湿って暖かい空気が乗り上げた状態です。したがって、エマグラムで逆転層、湿潤空気と乾燥空気の境界、暖気移流の条件を満たす高度が前線高度になります(図3)。

図3 温暖前線の高度

 

成層状態(対流活動)

  • 対流雲の発生する高度
  • 大気の成層状態(空気塊が上昇するか否か)
  • LCL(持ち上げ凝高度), LFC(自由対流高度), NBL(平衡高度)
  • ショワルター安定指数

ショワルター安定指数についてはこちらを見てください。

 

エマグラムを見るときの注意点

エマグラムは縦軸に気圧がとられています。その理由は高度の代わりに気圧を使ったほうが、取り扱い上の利点が多いからです。

しかし、そのお陰でそそっかしい人には、読み間違いを起こしやすいグラフになってしまいました。

ぜひ、次の2点には気をつけてください。

 

注意点① グラフの傾きは、横に寝ているほど「急」

私たちは小中学校時代から y = ax + bという形式の直線を扱ってきました。

そこでグラフの傾きというと、「x(横軸)の増加量に対するy(縦軸)の増加量の比」であると教わってきました。

したがって、図4の赤線と青線のどちらのほうが傾きが急かといえば、赤線だとすぐに分かります。

図4 見慣れたグラフの軸

 

ここで大切なのは、「軸の変化量に対する軸の変化量」を考えていたことです。

一方で、エマグラムの軸の取り方は、通常のグラフの軸とは逆になっています(図5)。

これまでに見慣れてきたグラフで言うと、縦軸がx(気圧)で横軸がy(温度)になっているのです。

図5 軸が通常とは逆のグラフ

 

気圧(高度)の変化に対する温度の変化を見たいはずなのに、変化の割合を見たい温度が横軸にきています。

このため、グラフが水平に寝てしまうほど、変化の割合としては大きく、傾きとしては「急」ということになります。

エマグラムではグラフが横に寝るほど、温度の減少は大きいと理解しましょう。

 

注意点② 高度が高くなるほど、縦軸の気圧は数値が小さくなる

ここで質問です。図6の赤丸の高度を気圧で読み取ってください。

図6 縦軸は減少する気圧

 

正解は620hPaです。780hPaではありません。

自室で落ち着いてやれば正解できた方でも、試験場で時間が限られてしまうと、つい「780hPa!」とやってしまいがちです。

絶対に間違わないための、自分なりのルーティンを決めてしまい、いつもそれで読むと良いでしょう。

例えば、読み取るべき場所をその下の目盛りと上の目盛りで挟み撃ちにして、「下から読むと減っていき、上から読むと増えていく」と2回読みしてはどうでしょうか。

上の例だと

「下の700からだと減るから690, 680, ・・・, 630, 620」
「上の600からだと増えるから600, 610, 620」

と読みます。

 

まとめ

今回のポイントをまとめます。

【エマグラムで読み取れること】

  • 雲頂高度、雲底高度
  • 逆転層の高度と種類
  • 温暖前線の高度
  • 成層状態

 

【断熱線・温度線の傾き】

  • 横に寝ているほど気温減率は大きい

 

【縦軸の気圧】

  • 高度が上がるほど、気圧は小さくなる(高度読み取り時には注意!)

 

最後に

気象予報士の試験ではエマグラムと呼ばれていますが、一般的には海外では「熱力学図」(thermodynamics chart)、国内では「断熱図」と呼ばれています。

使いやすさなどの観点からいくつものバリエーションがあります。日本ではエマグラムが使われていますが、米国では乾燥断熱線を45度程度に傾けたSkew-T Log-P図が主流です。

エマグラムの原型は、19世紀後半にドイツ人のヘルツが作ったとされています。この時代、多くの人により類似の図が多数作られたそうです。

ヘルツは周波数の単位に名を残す物理学者です。電磁波の発見者であるヘルツがなぜ気象に関係しているのか不思議ですね。実は電磁気の理論は気象理論と通じるところがあり、ヘルツはノルウェー学派の祖であるヴィルヘルム・ビヤークネスの師でもありました。

今回はエマグラムの概要について紹介しました。 次回は、エマグラムの用紙について学びます。

(修正履歴)2021.5.6
トップ画像と図2を修正しました。

 

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