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正渦度域・正渦度極大値・正渦度極大域・正渦度移流域

  • 知識

 

(2022.2.15)「負渦度移流」、「負渦度移流域」の表現を削除しました。

 

正渦度には、関連する紛らわしい用語があります。それが今回のテーマです。

説明に使う図

 

最初に、今回の説明に使う図を紹介しておきます。

図1は2021年3月6日12UTCの500hPa解析図です。華北から日本海に伸びる帯状の正渦度域(この言葉は後ほど説明します)の赤枠で囲った部分を題材にします。

このままだと見づらいので、図2のように模式化しました。

 

 

正渦度域

 

正渦度域は、500hPa解析図/予想図で正渦度が解析された領域です。

正渦度域は縦線で塗られています(図3)。縦線で塗られていない真っ白な領域は負渦度域です。

図3 正渦度域

 

正渦度域は、それを構成する大気の要素が反時計回りの低気圧性循環を持った領域ですが、実際にはどのような現象なのでしょうか。

私は鳥の群れのイメージを持っています。

鳥の大群が形や流れの向きを変えながら上空を飛んでいく映像を見たことがあると思います。まるで黒い川が流れているようですが、流れを構成する一羽一羽の小さい鳥が進行を変えながら飛んでいるのが、1本の川のように見えるわけです。

 

正渦度極大値

 

今回の説明図を再び示します(図4)。ただし、正渦度域を示す縦線があると目障りなので、これ以降は省略します。

図4 正渦度極大値

 

正渦度域の真ん中に「+156」という数値が記入されています。極大値とは、周囲よりも大きい「数値」ですから、「+156」が正渦度極大値です。

500hPa解析図/予想図に記入されている正渦度の数値は、いずれもその近辺での正渦度極大値です。

 

正渦度極大域

 

500hPa解析図/予想図には、等渦度線が破線で記入されています(図5)。

実際の解析図ではごちゃごちゃして見づらいのですが、等渦度線は40ずつ引かれています。

したがって、「+156」の極大値の周りには「0」「40」「80」「120」の4本の破線が引かれています。

図5 正渦度極大域

 

正渦度極大値の周辺の領域を正渦度極大域と言います。

明確な定義はありませんが、「正渦度極大域」=「正渦度極大値が存在するところ」と思って間違いありません。

 

正渦度移流域

 

温度移流を思い出してください。気温の高い方から低い方に風が吹くことを暖気移流と言いました。

同じように、正渦度の大きい方から低い方に風が吹いて、渦度が風で流されることを正渦度移流と言います(図6)。書籍によって「正の渦度移流」「渦度移流」の用語が使われることもあります。

図6 渦度移流と渦度移流域

 

正渦度極大域が移流してくる領域が正渦度移流域です。言い方を変えると、正渦度の下流が正渦度移流域です。

「正渦度移流域はどこか?」と問われたら、周辺の風向きを確認して、正渦度の下流を答えれば良いのです。

ちなみに、正渦度移流域では正渦度が接近してくるので、今後、渦度が大きくなることが予想されます。理論的には正渦度移流域では上昇流が強化されるので、気象解析では正渦度移流域を把握することは大切です。正渦度移流域があれば、700hPa天気図で上昇流の状況を確認します。

なお、正渦度の上流は渦度の極大域に向かって風が吹き込むため、これから渦度が小さくなることが予想されます(注)。

(注)本稿では当初、このような領域を「負渦度移流域」としていましたが、負渦度が接近してくることと紛らわしいため表現自体を削除しました。

 

最後に

 

正渦度に関連する紛らわしい用語を説明しました。

低気圧発達の観点からは正渦度移流域が最も大切になりますが、天気図解析にどのように使うかは別記事にまとめたいと思います。

※図1は気象庁の天気図をもとに、当サイトが加工して作成したものです。

 

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