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前線問題の問題

前線問題の傾向と対策を執筆するために、過去問題の分析をしています。その作業中に感じたことを書いてみたいと思います。

▼ブログ開始の動機

そもそもこのブログを始めたきっかけは、前線やトラフの解析が出題されることに不満を感じていたからです。

解析手法や結果の使い方について気象庁が十分な情報を開示していないにもかかわらず、試験でそれを問うのはおかしいではないか。参考書の説明もまったく不十分である。

だったらそれをなんとか解決したいという思いでした。

 

▼気象予報士は前線を引ける必要があるのか

気象予報士は天気図を分析して、今後の気象を予想します。しかし、天気図を書ける必要はありません。それは気象庁の仕事です。

前線を引ける必要もありません。それは本来は予報官の仕事であって、気象予報士の仕事ではないはずです。

気象予報士としては前線が書かれている状況を理解できれば良いのです。

例えば、前線が通過していったにもかかわらず雨が降らないどころか、ほとんど天気が崩れないことがあります。そうした状況がなぜ発生するのかを理解して説明できるのが予報士には必要なスキルです。

 

▼前線が通過しても天気が崩れない事例

2021年2月2日6時の事例を見てみましょう(図1(a))。

図1 2021年2月2日6時の天気図とレーダーエコー

天気図を見ると、日本には前線が2本、北東から南西にのびています。

レーダーエコー(図1(b))を見ると、南側の寒冷前線に沿って対流性のエコーが見られ、非常に激しい雨が観測されています。都内の我が家でも一時期、雪がちらつきました。北側の前線による降水域もしっかりと確認することができます。

しかし、南側の前線が通過した後、天気は急速に回復していきました。結局、北側の前線は12時の天気図からは消滅してしまいました。

その理由は、1本目の前線が通過したことで下層大気は湿りが一掃され、上昇流がなくなったからです。

気象予報士には、こうした前線とその周囲の状況を読み解く能力が必要です。

 

▼試験で要求されるスキル

前線を書く能力は気象の解析力というよりは、「スキル」だと思います。

国によって前線の書き方は異なります。国内においても、数十年前と現在では書き方が変化しています。それどころか、予報官によっても解釈が異なるのです。

受験者は「唯一、絶対の答えがあるはず」と思って学習します。

しかし、前線に代表される解析は多分に主観的な作業です。プロであっても、解析する人によって、前線をどこまで引っ張るかとか、どの辺に引くかは異なるのです。

予報士試験の参考書は、前線の引き方として概ね次の2点を挙げています。

  • 等温線集中帯の南端に前線を解析できる
  • 西日本の梅雨は温度傾度よりも相当温位傾度の方が明瞭

しかし、この程度の知識では、予報士試験に出題される前線描画問題はまったく解くことができません。

等温線に沿わない前線や前線上のキンクの解析、あるいは梅雨期でないのに相当温位線で前線解析をさせるなど、受験者が平均的に持っている知識をはるかに超えています。また、天気図を見慣れていない受験者をミスリードするような資料も出されています。

これらが気象庁内の「技術」として継承され、前線解析されている分にはまったく問題ないです。しかし、公開されていない技術をもとにした問題を出題するというのはおかしいと思うのです。

 

▼最後に

いったいなぜ前線をかく問題が出題されるのでしょうか。私には分かりません。

前線問題は毎回出題され、配点の割合も大きくなっています。ぜひ、前線を書かせる出題から、前線の意義を読み取らせる出題に改まって欲しいと考えます。

採点者にとっても、採点作業がしやすくなるはずです。

 

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