気象台は、土砂災害や低い土地の浸水、川の増水や氾濫に厳重に警戒するよう呼びかけています。
気象情報ではよく、このようなメッセージを耳にします。しかし、降水量の予想値を聞いても、その深刻さがピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
平均的な降水量は地域や時期(月)によって異なるため、予想降水量の受け取り方は状況に応じて異なるはずです。そこで、今回は予想降水量をどう捉えたら良いのかを考えてみたいと思います。
地域と時期によって異なる平均降水量
(ピンとこない予想降水量)
大雨が予想されるとき、気象庁は雨の予想を「予想される1時間降水量」や「予想される24時間降水量」として発表します。
かつては、大雨警報・注意報の発表基準は降水量で定められていました。
しかし、平成20年(2008年)以降は災害との対応が良いという理由で、降水量に代わって雨量指数が段階的に導入されてきました。
そして平成29年(2017年)の出水期から、二次細分区域ごとに表面雨量指数、土壌雨流指数を用いた基準に変わり、降水量を用いた基準は使われなくなりました(古い試験問題では雨量基準を使っているのでご注意!)。
このため降水量と大雨の関係が分からなくなり、予想降水量を聞いてもどの程度の逼迫度があるのかが分かりづらくなりました。
さらに、降水量がピンとこない理由のひとつに、平均降水量が地域や時期により大きく異なることが挙げられます。福岡、東京、札幌の月別平均降水量を比べてもそれは分かります(図1)。

降水量が増える時期は西日本では梅雨期、東日本では秋霖期、北日本では積雪期という傾向が見て取れます。
また、西日本では一般的に降水量が多いため、インフラ設備はそれに備えた設計になっているそうです。
※下水道設備の設計には1時間あたりの降水量(計画降水量)が用いられています。東日本から北日本では概ね30〜50ミリ、西日本では概ね60〜70ミリ(いずれも1時間あたり)のようです。
こうしたこともあり、例えば「1時間降水量40ミリ」と言っても、地域によってその受け止め方は異なってきます。
では、予想降水量をどのように理解したら良いのでしょうか。
地点別降水量は気象庁ホームページで確認できる
実は気象庁のホームページから、年別・月別の地点別最大降水量のデータを入手することができます。
「ホーム>各種データ・資料>過去の気象データ検索」でたどって、過去の気象データ検索のページを出します(図2)。

日降水量、1時間降水量、10分間降水量の最大値
「過去の気象データ検索」のページで降水量を調べたい地点を選択した後、「地点ごとの観測史上1〜10位の値」を選びます(図3)。

すると、過去の統計期間の中から降水量の最大値のトップ10が表示されます。
表1は東京都世田谷の表示です。地点によっては降水量のほかにも、気温や日照時間などの詳細なデータが表示されます。

世田谷の最大記録は日降水量が253.5ミリ、1時間降水量が92.0ミリであることが分かります。
自分の住まいの近くの地点の降水量を手元に置いておけば、気象情報の予想降水量を見てイメージが湧きやすくなるでしょう。
日降水量、1時間降水量、10分間降水量の最大値(年別)
「過去の気象データ検索」は多様な使い方ができます。前項では地点別の過去トップ10の降水量を見ましたが、今度は年別の最大降水量を見てみます。
「地点」と「年月日」の「年」だけを選んで「年ごとの値を表示」を選択します。すると表2のような降水量を含めた要素の値が年別で表示されます。
降水量については、年別の年間合計、1日、1時間、10分間の最大値が表示されます。

2011年から2024年までの14年間では、1時間降水量が50ミリを超えたのは2011年と2014年の2回だけだったことが分かります。
日降水量、1時間降水量、10分間降水量の最大値(月別)
「地点」と「年月日」の「年」だけを選んで「○○年の月ごとの値を表示」を選択すると、、その年の月別の最大降水量を表示することができます(表3)。

事例
具体的な事例で見てみましょう。
2025年9月11日、13時前から東京西部に発達した雨雲がかかり始め、13時過ぎには東京東部にも別の雨雲がかかり始め、激しい雷雨になりました(図4)。
都内では記録的短時間大雨情報が5回発表され、都心を流れる複数の川で氾濫が発生しました。

同日朝6時10分、気象庁発表の「大雨と雷及び突風に関する東京都気象情報 第5号」では、雨の予想は次のようになっていました(図5)。

11日の予想量を再掲します。
- 11日に予想される1時間降水量は多い所で、 東京地方 50ミリ
- 11日6時から12日6時までに予想される24時間降水量は多い所で、 東京地方 80ミリ
この予想値を過去の統計値(表1)と比べると、1時間降水量、24時間降水量ともに過去のトップ10に匹敵するものではありません。
注)表1の1時間降水量1位の92.0ミリは当日(9月11日)に記録されたものです。
日降水量80ミリは、過去15年間の中で2024年の98.0ミリに次いで、最下位から3番目に相当します(表2)。
ただし、「9月の日ごとの平年値を表示」で見ると、9月の日ごとの降水量は平年では10ミリに満たないので、相当多い量ということが分かります。
なお、9月11日は対流雲の発達によりGSM、MSMの予想をはるかに上回る大量の雨が降りました。
気象情報の「雨の予想」が予想降水量の上限値であると思ってはいけないというメッセージを与えてくれました。
最後に
表面・流域・土壌の3種類の雨量指数が導入されたことで視覚的な表示も可能になり、防災に大きく貢献しています。
一方で、指数そのものを人間が理解することは理解することは困難ですが、予想降水量は比較的理解しやすい数値だと言えます。
自分に関連する地域の1時間降水量、日降水量を頭に入れておくことで、気象情報の雨の予想がより身近なものになります。
降水量は無理に覚える必要はありません。大雨情報が発表になる都度、今回ご紹介した気象庁ホームページを繰り返し参照することで、数字の規模感が頭の中に定着していきます。
図の出典:図2〜5、表1〜3は気象庁データを加工して作成しました。
参考:「雨量何ミリなら災害に注意?」(Yahoo!ニュース、牛山素行)
この記事が役に立ったと思われた方は、ポチッと押してください。

大雨警報の発出と降水量がリンクしていないのは確かにわかりにくいですよね。
改めて私の住む大阪市の警報基準を確認しましたが直感的に理解できませんでした…。
過去の気象データ検索についてはこれまで数えるほどしか見たことがなかったのですが
今回改めて使い方を教えて頂きより興味がわきました。今後もいろいろな使い方をしてみようと思います。
気象情報が氾濫しすぎて素人だけでなく、予報士にとっても分かりづらくなっている気がします。
気象庁も審議会で揉んでいるようですが、どうも分かりやすさからは遠のいているように思います。
ちょうど今日(2025.9.26)の朝日新聞に大略、次のような投稿が掲載されていました。
・気象庁が最高気温40℃以上の日に新たな名称を検討中とのことである
・しかし、近年の異常気象関連で使われる表現がピンとこない
例)ゲリラ雷雨、記録的短時間大雨情報、10年に1度
・その表現の示す危険性、異常性を具体的にしてほしい
例)大雨なら平均降水量と比べてどうなのか、
増水は危険水量まで何センチなのかなど
・こうした表現に慣れてくると逆に意識しなくなるのではないか
それにしても、気象庁HPは使いづらいですね・・・💦
朝日新聞の投稿は私が気象予報士の資格を取る前に感じていたことで一般の方の普通の意見だと思います。考えた方は真剣に検討した上で出したものなのでしょうが言葉が一人歩きしている感じがします。
そうですね。
「線状降水帯」も受け手に誤ったメッセージが伝わる恐れのある表現だと思います。
過去の審議会資料を熟読しても、これが必要とされる動機が不明でした。