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消えた等値線を追う

天気図を見るようになって視力の衰えに気が付く方もいると思います。
それほど視力にストレスを与える天気図ですが、さらに試練を与えてくれるのが等値線です。

等値線を色鉛筆でなぞっていくとき、追っかけている線が途中でどこかに消えてしまうことがあります。

消えた等温線を探していると無駄な時間があっという間に過ぎていきます。

そこで、今回は等温線を例に取り、等値線が迷子になってしまうパターンと見つけ方を紹介します。

パターン① 他の等値線と重なってしまう

500hPa天気図では、等高度線の形状から低気圧と対応するトラフや寒冷渦、高気圧と対応するリッジなどを探します。

また、トラフの前面で湿数が3℃以下であれば中層が湿っていることを意味するので、大気の状態が不安定となっている可能性があります。

さらに、500hPaの気温は大気の状態を判断する重要な情報なので、どの程度の寒気が南下しているのかを見ます。
盛夏期は−6℃、厳冬期は−30℃〜 −36℃以下が強い寒気の目安になります。

さて、図1は500hPa実況天気図です(2025年4月28日12UTC)。

図1 500hPa天気図(2025年4月28日12UTC)

 

日本海中部に5400mで−30℃の寒気を伴う寒冷渦が東進しています。
この天気図を使って、−24℃の等温線をなぞる作業をします。

寒候期(11月〜4月)、500hPa天気図の等温線は6℃ごとに引かれているので、−12℃の等温線の2本北側の等温線が−24℃線です。

図2 −24℃線を追跡する

 

図2-①
図の右手から順調に−24℃線をなぞっていきます(薄い青線)が、5400mの寒冷渦の南側で−24℃線が消滅してしまいます。

図2-②
右からの追跡を一旦あきらめ、上からおろしていくことにしました(濃い青線)。しかしこれも寒冷渦の北西あたりで等温線を見失ってしまいました。

図2-③
どうやら−24℃線と5460mの等高度線がピッタリと重なってしまっているようです。周囲の気温分布(−21.7、−23.0、−21.5)とも矛盾しないので、赤線でつなぎます。

これで完了です。

 

パターン② スタンプと重なってしまう

850hPaの等温線は通常、その形状(盛り上がり具合や垂れ具合)や等温線の混み具合などを見て、前線の存在を判読するのに用いることが多いと思います。

しかし冬季の使い方は異なってきます。この時期は温帯低気圧の通過はまれになるので、前線解析ではなく降雪の有無を判別するために用います。

もちろんその前提として、冬型の気圧配置になっていれば日本海側で、南岸低気圧が進んでくれば西日本・東日本の太平洋側や中部地方で降雪の可能性があります。

あとは降水予想と850hPaの気温次第というわけです。

では、図3を見てみましょう。2025年の2月の850hPa気温・風、700hPa上昇流の予想図です。

図3 850hPa気温・風、700hPa上昇流の予想図(初期時刻2025年2月1日12UTC、FT=48)

 

「そもそも日本はどこなんだ〜?」という声も聞こえてきそうです。北緯40°、東経140°(秋田)を起点にぼんやりと日本列島が見えてくるまで、日々、天気図とにらめっこをして研鑽をしましょう。

図4 −12℃線を追跡する

 

850hPaで−6℃というのが地上で雪が降るときの目安なので、通常は−6℃線を解析すると思います。
ここでは例題として、−12℃線を追跡してみましょう。

図4-①
中央部に−12のスタンプが見えますが、等温線が明らかに込み入っていて分かりづらいです。そこで、分かりやすそうな−6℃線に注目して取っ掛かりにします。

図4-②
−6℃線を引きました。日本周辺の寒気の入り方や等温線の形状が分かれば良いので、天気図の端から端までなぞる必要はありません。

図4-③
−6℃線(薄い青色)を基準にして、−12℃線を見つけます。
予想図(FXFE)の等温線は寒候期でも3℃ごとに引かれているので、−6℃線の2本北側が−12℃線になります。

「−12」のスタンプの両側から攻めます(濃い青線)が、どうしても「−12」の周辺の等温線がどうなっているのか不明です。

無理に追いかけると、1本南側の−9℃線と混線してしまいそうです(紫線)。

図4-③
どうやら原因は「−12」のスタンプの幅が異様に広いため、−12℃線を完全にブロックしていることにあるようです。

両隣の−9℃線、−15℃線に引き込まれないように注意しながら、外挿して引きます(赤線)。

いやあ、予想図(FXFE)のスタンプの白地の背景の大きさには参りました!

 

さいごに

850hPaの予想天気図では等温線が3度ごとに引かれていましたが、実況天気図では4月〜11月は3℃ごと、12月〜3月は6℃ごとに引かれます(500hPaとは少しずれていますね)。

季節の変わり目の4月は、混み合った等温線にまだ目が慣れずに戸惑ってしまいます。

そんな時は0℃、6℃、12℃という具合に1本ずつ間引いて引くと、作業がやりやすくなります。3℃単位に引く必要があれば、引いた6℃ごとの等温線の間にある等温線をなぞれば良いだけです。

図の出典:図1〜4のすべて、気象庁天気図を本サイトで加工したものです。

 

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