気象予報士試験の学習では覚えておかなければならない数値がいろいろとあります。例えば雨の強さ、風の強さ、台風の大きさと強さが挙げられます。
このような気象庁が定義したもの以外でも、知っておくと天気図を見るときに役に立つものがあります。
これは経験法則からくるもので、例えば「この温度や降水量だと何が起こりそうか」とかという目安になります。
今回はそんな数値をまとめてみました。
図の出典:すべて気象庁、ただし以下の天気図は当サイトにおいて加工しました(図1, 3(a)(b), 5(b), 6, 8, 9(b), 10, 12(a)(b), 13, 14, 15, 16)
500hPaの特定高度線
数ある等圧面天気図の中でも、中層の500hPa面は季節進行を見るのに適しています。
5400m:寒気の目安(冬季)
500hPa 5400m線は概ね500hPaの等温線の−30℃線に対応しています(図1)。冬季の−30℃は強い寒気の目安なので、5400m線が南下してくる予想だと、寒気が入ってくる判断の材料になります(夏季の500hPaの寒気は−3〜−6℃です)。
実際に寒気の程度を見るには500hPaの等温線の値だけではなく、等温線を横切る風が吹くか(寒気移流)、他の気圧面の状況はどうかも合わせて判断します。
図1の2024年1月16日は西高東低の冬型の気圧配置となり(図2(a))、北日本、東日本の日本海側で降雪となりました(図2(b))。
5700m:偏西風の目安
500hPa 5700m線は概ね偏西風(ジェット気流)に対応しています。図3を見てください。これは2024年2月15日の500hPaと300hPaの高層天気図です(図3(a)、3(b))。
両者を見比べると、500hPaの5700m線が300hPaの9480m付近の亜熱帯ジェットに対応していることが分かります。
ちなみに、300hPaの8640mに寒帯前線ジェットが見られます。
2月に入ると300hPa面では偏西風が少しずつ北上を始めるなど、高層では春に向けた変化が徐々に見られるようになります。それでもこの日は亜熱帯ジェットに相当する500hPa 5700m線は日本の南にあります。
このように冬季は偏西風が南岸まで南下するので、強風が吹く伊豆(静岡県)のキャンプ場はクローズすると聞いたことがあります。
御前崎(伊豆半島最南端)の冬季(2月)と夏季(8月)風速を見てみます(図4)。
冬季(図4(a))と夏季(図4(b))は縦軸の尺度が異なるので注意してください。パッと見で、冬の方が風が強いことが分かると思います。
ちなみに冬季の風向は西よりが支配的ですが、下旬の一時期は高気圧の張り出しや低気圧の通過に伴い乱れています。
5820m:梅雨前線の目安
500hPa 5820m線は概ね梅雨前線に対応しています。図5を見てください。これは2024年、関東甲信地方が梅雨入りした日(6月21日)の天気図です。
一方、図6は週間予報支援図に掲載されている、東経135°の500hPa高度の時系列推移です。
図6の予測によると5820m線は北上を続け、6月末には北緯40℃まで北上する予想です。
この年の梅雨入りの時期は次のようになりました。
九州北部 6月17日ごろ、 関東甲信 6月21日ごろ、 東北南部・北部 6月23日ごろ
5880m:太平洋高気圧の目安
500hPa 5880m線は概ね太平洋高気圧に対応しています。梅雨が明けると太平洋高気圧に覆われて夏が始まります。
2024年の夏の気温は全国的にかなり高く、9月の東日本と西日本では統計開始以来で最も高くなりました。図7はこの状況を表す図です。
過去30年間の平均気温と比べてどれぐらいの差があるか(偏差)を示し、偏差が正(赤色)は平年より高いことを表します。東日本と西日本では9月中旬に山のような盛り上がりを確認できます。
再び、東経135°の500hPa高度の時系列推移で9月中旬の状況を見てみましょう(図8)。
500hPaの5880m線は北緯40°付近にとどまっています。さらに、真夏でもあまり目にしない5940m線まで居座っています。
東京では9月18日に、9月の最高気温35.1℃を記録しています。図9はこの日の地上天気図と500hPa天気図です。
西〜東日本は500hPa 5940mの背の高い高気圧に覆われています(図9(b))。高気圧圏内では下降流の断熱圧縮による昇温と、日射による気温上昇で大気の状態が不安定となります。
図10では山岳地帯を中心に発雷しているのが分かります。
上空の寒気
500hPa −24℃
−24℃は冬季に雪が降るときの500hPaの気温の目安です。下層の気温にもよりますが、500hPaの気温がこれより高いとみぞれになる可能性があります。
2023年11月20日は一時的な冬型の気圧配置になり、北日本では雪の降ったところがありました(図11)。
図11の推計気象分布によると、中部山岳と奥羽山脈に沿った一部地域、および北海道の羊蹄山周辺は降雪ですが、渡島半島や石狩平野一帯はみぞれもしくは雨になっているようです。
このときの500hPaと850hPaの天気図を図12に示します。
500hPa −24℃の境界は能登半島から関東にかけて位置し(図12(a))、これより南西では雨もしくは晴れになっています(図11)。一方、雪の降っているエリアは500hPaで−24℃以下で、850hPaで0℃以下(山岳地帯)と一致しています。
300hPa −30℃
今度は一転して、季節は夏のお話です。300hPaに−30℃の寒気が流れ込むと、夏季は大気の状態が非常に不安定になることがあります(地上気温も関係する)。
2023年8月12日、岩手県で線状降水帯が発生しました(図13)。
三陸沿岸部の大槌町(おおつちちょう)では、1時間に最大66.5mmの非常に激しい雨が観測されました(図14)。
この状況をもたらした原因の一つが上空の寒気です。こちらの衛星水蒸気画像をご覧ください(図15)。
大槌付近に低気圧性の循環が明瞭に写っています。これは上層寒冷渦(UCL: Upper Cold Low)といい力学的圏界面(対流圏界面のようなもの)が垂れ下がっているため、300hPaで−30℃以下の寒気を伴います。
この日の300hPa天気図では−30℃の気温は表示されていませんが、三陸沖の低気圧(UCL)のLに重なって、寒気の中心を意味する「C」が打たれています(図16)。
記録的降水量
気象情報には雨の予想として降水量が記載されます。
降水量と災害規模の対応は地形や各地のインフラ状況により異なりますが、過去の最大降水量を頭に入れておくことは一つの目安になります。
1時間降水量:153mm
過去の最大1時間降水量は「153mm」です。「1時間に150mm程度」と覚えておくと良いです。
- 佐原(千葉県) 1999年10月27日
- 長浦岳(長崎県) 1982年7月23日
佐原の事例を見てみます。なお、佐原市は2006年に統合され現在は香取市になり、アメダス観測所名も香取に変更されています。
10月26日に東シナ海で発生した低気圧は、27日にかけて四国沖から東海沖を通って関東地方へ進み、28日は三陸沖に進みました。
中心気圧は27日3時の1006.6hPaから翌28日3時には987.7hPaまで急速に発達(爆弾低気圧)。東日本から北日本にかけて人的被害や住家被害をもたらしました。
日降水量 922.5mm/日
過去の最大日降水量は「922.5mm」です。「1日だと1000mmには満たない」と覚えておくと良いです。
日(にち)降水量とは、当日の0時00分~24時00分の降水量のことです。
- 箱根(神奈川県) 2019年10月12日
この日、台風第19号が強い勢力で静岡県に上陸し、関東、東北地方を通過しました。
観光名所の芦ノ湖では大雨で水位が上昇し、湖畔では氾濫が発生。また、箱根登山鉄道の沿線では土砂崩れや倒木が多数発生し、全面復旧に9ヶ月を要しました。
最後に
予報士の常識として知っておきたい数値を実例入りでご紹介しました。
今回紹介しきれなかったものもありますが、ご自身でも探してみてください。気になるものがあったら、コメント欄から教えていただけると幸いです!
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更新ありがとうございます。高層天気図でだんだんこの数字の意味がわかってくると毎日見るのが楽しみになってきますよね。
私は850hPa相当温位図で梅雨の時期の345K線も注目するようにしています。
コメントをありがとうございます。
ひとつの現象を複数の天気図を使い、複眼的に確認できるようになると楽しいですね!
とっても助かります このブログも参考書のように使うとしたらどのような順序で見るのが良いですか
こんにちは。記事を見ていただきありがとうございます。
各ページのトップに「知識」「天気図解析」・・・という具合にメニューがあります。
これを目次のように使っていただくと良いと思います。
学習を頑張ってください!