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前線記入問題(第59〜55回)

前線解析の問題に悩んでいる方は多いと思います。過去の出題事例を徹底的に分析し、その対処法を考えてみたいと思います。

出題数が多いので、今回は第59回(2022年度第2回)〜第55回(2020年度第2回)の9事例を対象にします。

※本稿は作成途上です。随時追記します。

出題内容の傾向と対策

前線問題の傾向

出題回・配点・難易度

第55回から第59回にかけて、前線記入の問題は毎回出題されています。第56回以降では実技1および実技2のそれぞれで出題がされています。

各問題とも配点は5〜8点程度で、相対的に配分は大きいと言えます。

難易度(後ほど説明)は中〜高レベルの出題が多く、解析作業と解答用紙への記入を慎重に行うと時間を要するので、時間配分には注意が必要です。

表1に出題回と配点、難易度をまとめました。

注)問題番号は次のルールで表記しています。
  例)1-2(3)② : 実技1 問2(3)②

表1 前線記入問題の出題回と配点、難易度

難易度(5段階評価)は私が以下の基準で付けたものですので、参考程度に見てください。

【難易度(5段階)】
☆: 普通のレベル(時間をかけなくても解くことができる)
★〜★★★★: ★が多いほど難易度は高い
 【難易度の評価基準】
「寒冷前線」、「温帯前線」、「低気圧中心(前線の連結部)」、「その他」の4項目別に難易度が高いものに★を割り当てています。
例)★は4項目のいずれかがレベル高、★★★★は4項目全てのレベル高を表す。

前線を記入する天気図

前線問題では、解答用紙に印刷されている天気図に前線を記入します。この天気図のことを「前線を記入する天気図」と呼びます。

前線を解析するには850hPaの等温線や等相当温位線などに着目します。これらの要素を「主たる根拠」、また問題文で使用することが指定されている天気図を「用いる天気図」と呼ぶことにします。

表2に前線を記入する天気図と主たる根拠、主に参照する天気図をまとめました。問題文に「天気図〜を参考にすること」とある場合は、用いる天気図の名称の後に「(参考)」とつけました。

表2 前線を記入する天気図、主たる根拠、用いる天気図

この一覧から分かるように、前線を記入する天気図は「地上気圧・降水量・風 予想図」が圧倒的に多くなっています。

前線解析の根拠は850hPaでは等温線または等相当温位線の集中帯および風のシアーで、地上の予想天気図に転記する際には気圧の谷や風のシアーを用いるケースが多くなっています。

用いる天気図の種類は少ないこともあれば、非常に多いこともあります。

また、表2の通番「6」(57-2-2(3))では枝問では用いる天気図の指定はなく、問2の本文に「図5〜図8は27日9時を初期時刻とする12, 24, 36時間予想図である。これらと、図1〜図3を用いて以下の問いに答えよ。」とあるのみです。

多くの枚数の天気図を行ったりきたりするだけで気分的に焦ってくるので、枚数の多い場合は天気図をうまく整理することも大切です。

問題文の指定

前線記入問題では3種類の指定がされることがあります。

前線指定: 解答用紙に記入する前線を「温暖前線および寒冷前線」のように指定すること
枠線指定: 「前線は解答図の枠線までのびている」のように、前線をどこまでのばすか指定すること
前線記号指定: 「前線記号を用いよ」のように、各前線にふさわしい記号を付すことを指定すること

表3に各種指定をまとめました。問題文に前線指定がないときは、模範解答に記入されている前線を「解答する前線」として表しています。

表3 問題文の指定

前線指定がない場合、低気圧の閉塞の可能性を判断することが必要となります(58-2-2(3))。

枠線指定がないときは、前線をどこまでのばすかも採点対象になると思われます。

前線問題の対策

時間がなくても何かを描く

前線記入問題は配点の比重が大きいので、解答に十分な時間が割くことができなくても、解答用紙には必ず何らかの前線を記入して部分点を狙います。

時間配分の戦略を立てる

前線解析に手間取って他の問題の解答時間がなくなることのないよう、戦略を練っておきましょう。2つ紹介しておきます。

  • 前線記入問題は後回しにする
    • 前線記入の問題は他の問題とは独立しており、これを解かなくても先の問題に支障はありません。時間がかかりそうなら、前線記入の問題は後回しにするのも一案です。
  • 前線解析する前に、解答用紙に目の子で「とりあえず」の前線を記入しておく
    • 緻密な解析をするには、風のシアーや等温線の状況を調べるために複数の天気図を参照しなくてはなりません。時間が迫っている時には、これをやっているだけでも焦るものです。時間がかかりそうなら、解答用紙にはとりあえず目の子で前線を記入し、その上で解析に取り掛かります。
    • 地上天気図に前線を記入する問題では、明瞭な気圧の谷に前線を通すケースがよくあります。目の子の前線記入では、このように解答用紙の特徴だけから手早く記入します。解答用紙にとりあえず記入することで気持ちも落ち着きます。残す時間内で解析が完了すれば、書き直せば良いだけです。

問題用紙の天気図に識別記号をつける

参照する天気図の種類が多いと、どの天気図を見て良いのか混乱して焦る原因にもなります。

    • 天気図は実況、12時間予想図、24時間予想図というように、時刻別にグルーピングすると良いでしょう。
    • 解析に取り掛かる前に、天気図の脇に「実況」「12」「24」と大きく書いておくと判別しやすくなります(図1)。
図1 天気図に分かりやすい表示をつける

 

問題文の指定を守る

表3で示したように、問題文には前線指定、枠線指定、前線記号指定の最大で3つの指定が付されます。当然のことですが、これらの指定は漏らさずに守るようにします。

なお、前線指定や枠線指定がない場合は、低気圧の閉塞の可能性や前線をどこまでのばすかを判断するため、解析時間が長くなるおそれがあります。この場合は前述のように、解答の順番を後回しにする判断も必要です。

 

各論

(以下、作成中)

寒冷前線の解析、温暖前線の解析、低気圧中心の解析、などについてまとめる予定です。

 

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「前線記入問題(第59〜55回)」への6件のフィードバック

  1. 前線の作図が本当に難しく(特に温暖前線)、このような記事は非常に参考になります!ありがとうございます!

    1. いつもご覧いただきありがとうございます。
      前線解析は難しいですよね。予報官によっても差があると言います。

      受験される方々の学習効率が上がるよう、続きを作成したいと思います。
      ご意見があればまたお聞かせください。

  2. 気象予報士試験58回で合格したものです。合格後もこちらのサイトも参考にしながら勉強を継続しておりますが前線記入は苦手で未だに自信がありません。本稿の「対策」についてはおっしゃる内容だと思います。この試験は部分点を狙ってとにかく書くことですよね。

    1. 昨年の合格、おめでとうございます!大変な労力を重ねられたことと思います。
      そして合格後もお立ち寄りいただきありがとうございます。

      合格してしまえば、前線にしてもトラフにしても「そこら辺にある」ということが分かれば十分だと思います。

      予報官はディスプレイ上に最新の観測データに前時間のデータや前線、雲画像などをオーバーレイ表示して解析しているので、それと同じものを一般人が描けるはずがないと思っておくと気分的に楽になります。

      続きもゆっくりと書いていきますので、よろしくお願いします。

      1. コメントありがとうございます。実務上ではそういう工程があるんですね。少し気が楽になりました。これからも更新を楽しみにしております(ゆっくりで良いです)。

        1. ありがとうございます。
          試験勉強が終わってしまうと、覚えたことをどんどん忘れていってしまうものです。
          私は気象業務に従事しているわけではないので、モチベーションを維持するために次の目標を設定して進んでいます。

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