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暗記の才能

暗記って、けっこう大事かも

日本の学校教育は知識の詰め込み(いわゆる暗記)が中心で、思考力を身に着けるやり方になっていないと指摘されます。

その是非については、立場に応じて色々な意見があることでしょう。

 

人生の後半戦にどっぷりと浸っている私が最近思うのは、暗記も悪くないということです。

社会に出てしばらくの間は仕事を覚えるのに忙しい時期が続き、それが過ぎると今度は社内外の(夜の)付き合いが増えてきます。自分のための勉強をしようという意欲も湧きません。

しかし時間に余裕ができてくると、改めて勉強をしてみたいと思うようになりました。

 

このようなとき、学生時代に習ったことが「ああ、そういえばこんなことあったな」というレベルでも頭の片隅に残っていると、学習の足掛かり手がかかりになるのです。

内容なんか覚えていなくても構いません。そもそも学生時代の学習はキーワードを丸暗記するだけで、理解なんてしていませんでした。試験が終わるとすべて忘れてしまっていました(と思っていました)。

ところが人間の記憶力って不思議です。キーワードを目にすると、「ああ、懐かしいなあ」と記憶が蘇ってくるのです。

キーワードさえ出てくれば、あとはそれをきっかけに教科書をめくったりネット検索をすることが可能になります。興味の連鎖は果てることなく、芋づる式に続きます。

 

最近もこんなことがありました。天気図の作成がいつ頃から始まったのか、その歴史を追っかけていたときのことです。

19世紀に起きたクリミア戦争で、フランス軍が自慢にしていた最新鋭の軍艦アンリ4世号が、折から発生した暴風により沈没してしまったのです。

戦いで沈没するならまだしも暴風で沈没するとはけしからんということで、これがきっかけで天気図が作られるようになったということを知りました。

そんなことからトルコの歴史に関心を持ち、そこがかつてはビザンツ帝国であったこと、ビザンツ帝国皇帝が西ローマ帝国に働きかけ、ウルバヌス2世が十字軍を提唱したことなどを改めて学びました。

私は高校時代に世界史を選択していたので、頭に残っていた固有名詞をつないで歴史を辿ることができました。

気象とは関係ないのですが、断片的な知識を結ぶことができて満足感が得られました。

同じようなことを日本の歴史でやろうとしても、日本史は履修しなかったので、なかなか関心を持つことができません。

 

「教科書的には」という表現

気象予報士の学習を始めると頭の中にキーワードがない状態ですので、いくら本を読んでもスーッと頭に入っていきません。

私も一般知識の「地衡風」「傾度風」「旋衡風」の概念が分からず、いつも参考書の同じところで寝落ちしていました。

こうしたときは無理に分かろうとせず、柳のように受け流してとりあえず先に進むことをお勧めします。最初は分からないことでも、2回目、3回目と繰り返して読むうちにだんだん分かってくることがほとんどです。

 

私がもう一つ疑問に思ったことは、予報士試験の参考書にたびたび出てくる、「教科書的には・・・」という表現でした。

耳慣れない言葉ですが合格してからも耳にするので、この業界ではよく使われる表現のようです。一般的には「理論的には・・・」「理屈の上では・・・」のような表現が用いられると思います。

では、どんなものが教科書的なのでしょうか。例えば、発達する低気圧に関する理屈は次のようなものを挙げることができるでしょう。

 

低気圧とジェット気流の関係

  • 発達する低気圧は寒帯前線ジェットの南側にある
  • 閉塞した低気圧の閉塞点は寒帯前線ジェットの真上に位置する
  • 閉塞した低気圧の中心は寒帯前線ジェットの北側に位置する

 

低気圧と雲域の関係

  • 発達する低気圧の北側には、高気圧性循環をもつバルジ状の雲域が広がる

 

低気圧と500hPaトラフの関係

  • 発達する低気圧の西側には500hPaトラフがある
  • トラフの後面には寒気を伴い、前面には湿り域を伴う
  • 500hPaトラフが低気圧を追い越すと、低気圧はそれ以上発達しない

 

低気圧と温度場・鉛直流場の関係

  • 発達する低気圧の前面には暖気移流、後面には寒気移流がある
  • 発達する低気圧の前面には上昇流、後面には下降流がある

 

さて、なぜこれが「教科書的」あるいは「理屈の上では」になるのでしょうか。それは発生するすべての低気圧が、上に書いたような特徴を有するとは限らないからです。

明瞭なトラフが見当たらないのに発達する低気圧があると思えば、バルジ状の雲域を伴わない低気圧もあるといった具合です。上記の特徴の一部を満たすことはあっても、すべてを同時に満たすということは珍しいのではないでしょうか。

このような特徴を「なぜそうなんだ?」と理解しようとする姿勢は大事です。しかし、これをやっていると時間ばかりが過ぎていき、疑問も解消されないという悪循環に陥ります。

このような疑問は経験を積んでくると自然と解消されていく(諦めがつく?)ものも多いのです。試験に合格して天気図をたくさん見るようになると自分の引き出しも増えることで、理解度も増していきます。

疑問を持つことは大切なことですが、試験勉強中は参考書に書かれていることを素直に受け入れて前に進むことも大切です。

ちなみに、上に書いたような教科書的に特徴を列挙してくれた参考書があれば嬉しいのですが、残念ながらないようです。

 

天気図解析で最も重要な能力とは?

記憶の話からそれてしまいましたが、最後に天気図解析で最も必要な素養、能力は何かに触れておきたいと思います。皆さんは何だと思いますか?

トラフ解析、等値線解析、・・・、はたまた(細かい天気図を読み取れる)視力?

いろいろあってすべて正解だと思うのですが、私が最も大切だと思うのは記憶力、それも短期記憶です。

 

「300hPaの天気図には寒帯前線ジェットが北日本の上を流れていて、それに対応する500hPaの強風軸はこれか。すると地上天気図のこの前線とジェットが対応しているな。」

「地上天気図の黄海の低気圧と対応している500hPaのトラフがこれで、その前面に700hPaの湿りがあるな。」

 

天気図をめくりながらこんな作業を繰り返すわけですが、この「どこに何があった」というのをどれだけ自分のワーキング・メモリに詰め込めんで、自在に引っ張り出せるかが大事です。

私の場合は「昨晩の夕食は何を食べたっけな?」と思うレベルなので、毎日苦労しています。(笑)

 

 

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