気象解析では雨域や雲域の示す特徴的な形状に注目して、決まった言葉で表現します。「形状の特徴を述べよ」のような問題に対応するには、この表現を押さえておく必要があります。
そこで形状を表す表現を過去の問題から集めてみました。
※本稿は第42回〜第56回の出題を対象に分析した結果です。
※過去問題を次のように表記します。
例)50-1-2(3)② : 第50回 実技1 問2(3)②
帯状
「帯状」はエコー、強雨域、雲域、特定の領域の形状を表すのに用いられます。
【用法】
帯状の強雨域 56-1-4(1)、52-1-2(3)②、52-1-2(4)①
帯状の降水域 50-2-1(1)⑧
帯状エコー 56-2-3、52-2-3、46-2-3(1)
帯状の雲域 51-2-1(4)①、48-2-1(1)
帯状の雲が並んでいる 47-1-1(1)
帯状の領域 52-1-2(2)①、48-2-1(4)③、45-1-2(1)
【出題例】
帯状の強雨域
強雨域は帯状の南西側ほど狭くなっている(56-1-4(1))。
領域Yには、帯状の強雨域がみられる(52-1-2(3)②)。
帯状エコー
帯状エコーP-Q-Rを構成する主要な雲の種類を一つ選んで答えよ(52-2-3(1)問題文)。
帯状の雲域
中国大陸から日本の東海上にかけて、北緯30°線に沿ってのびる帯状の雲域がみられる(48-2-1(1)問題文)。
帯状の雲
破線で囲んだ領域に、風の流れにほぼ直交する走向を持つ帯状の雲が多数並んでいる(47-1-1(1)問題文)。
帯状の領域
湿数6℃以下の相対的に湿潤な領域が、関東地方から南方向に帯状にのびている(52-1-2(2)①)。
850hPa風速50ノット以上の領域は、台風の中心の南側から北東側にかけて帯状に分布(45-1-2(1)、一部改変)。
線状
エコー、強雨域の形状を表します。
【用法】
線状の強雨域 51-1-3(3)
線状のエコー 42-2-4(2)②、42-2-4(3)
【出題例】
線状の強雨域
四国地方西部から四国の南海上にかけて、50mm/h以上の、幅が10〜20km程度の線状の強雨域がみられる(51-1-3(3)問題文)。
線状エコー
和歌山市に強い線状エコーが接近している(42-2-4(3)、一部改変)。
筋状
雲域の形状を表します。
【用法】
筋状の雲域 46-2-1(5)⑩
【出題例】
雲域CとEは下層風に平行な筋状を呈しており、Eの領域内にある隠岐の下層風は西風とみられる(46-2-1(5)⑩)。
渦状
雲、エコーの形状を表します。
【用法】
渦状の雲 55-2-3(1)①
渦状エコー 46-2-3(1)
【出題例】
渦状の雲
渦状の雲の南側に暗域が回り込み、平島の西側の上中層に乾燥空気が流れ込んでいる(52-2-3(1)①)。
木の葉状
雲域の形状を表します。
【用法】
木の葉状の雲域 54-1-1(3)③
【出題例】
華南・華中から日本海にかけて、木の葉状の雲域がみられる。この雲域と①の強風軸との位置関係を20字程度で述べよ(54-1-1(3)③問題文)。
弧状
特定の領域の形状を表します。
【用法】
弧状に分布 54-2-2(1)、45-1-2(1)
【出題例】
850hPa風速50ノット以上の領域は、台風中心の西側、北側、東側、南東側で中心から200km以内と、この領域の北東部分から南東側に600kmまで弧状に分布(54-2-2(1))
くさび状
乾燥域の形状を表します。
画像:モノタロウ
【用法】
くさび状にのびる乾燥域 45-1-2(4)
【出題例】
700hPa面の湿潤域が低気圧中心の東側に離れ、低気圧の南西方向からくさび状にのびる乾燥域の先端が低気圧中心付近に到達する予想になっている(45-1-2(4))。
コンマ状
強雨域の形状を表します。
【用法】
コンマ状の強雨域 42-1-3(2)②
【出題例】
強雨域Aは、14日0時から4時までの4時間に、コンマ状に変わりながら東北東進した(42-1-3(2)②、一部改変)。
フック状
エコーの形状を表します。
画像:モノタロウ
【用法】
フック状のエコー 42-2-4(2)②
【出題例】
12時から14時の2時間で、低気圧の中心付近のフック状のエコーは弱まって不明瞭になり、中心付近から南側へのびる線状のエコーが強まった(42-2-4(2)②、一部改変)。
最後に
特徴的な形状は必ず現れるものではありませんが、気象解析をするときの良い手がかりになります。
なお、今回の調査対象では出題されていなかった事例も多数あります。例えば、可視画像に現れる「団塊状の雲」です。この記事をもとに、ぜひご自身で補足していってもらいたいと思います。
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