エマグラム(3)エマグラム用紙

  • 知識

エマグラムについて理解する連載の3回目です。

前回はエマグラムの概要を学びました。今回はエマグラムの用紙に記載されている線について学習します。

エマグラム用紙にはあらかじめ、次の線が印刷されています。

  • 等温線
  • 等圧線
  • 乾燥断熱線
  • 湿潤断熱線
  • 等混合比線

この中で、2本の断熱線と等混合比線は、仮想的な空気塊に適用するものです。試験では、ショワルター安定指数(SSI)を算出するときに使います。

 

横軸と縦軸

図1は第50回試験の解答用紙に記載されたエマグラム用紙です。

図1 エマグラム用紙

 

横軸: 等温線

横軸は温度で単位は℃です。等温線は垂直に引かれ、2℃ごとに引かれています。

 

縦軸: 等圧線

縦軸は気圧(対数表示)で、等圧線が100hPaごとに水平に引かれています。

実際の大気に合わせるため、気圧の目盛りは上にいくほど減少しています。目盛りの値が1000, 900, 800, ・・という具合に減っていきますので、読み取るときは注意が必要です。

 

2種類の断熱線

空気塊は上昇すると気圧が減少し膨張するため、気温が下がっていきます。

気温減率は空気が乾燥している(未飽和)か、あるいは飽和しているかに応じて、乾燥減率と湿潤減率の2種類が存在します。

エマグラム(1)でも学んだように、空気塊とは大気の成層状態を判断するために仮想的に考えられたものです。周囲の大気とは独立して動くことができ、大気との熱のやりとりはない(断熱変化)を仮定します。

正確には「断熱気温減率線」と言うべきなのでしょうが、通常は「断熱減率線」あるいは単に「断熱線」と呼ばれています。

 

乾燥断熱線

飽和していない空気の気温減率を表した線です。乾燥した空気の温度は、1000mの上昇につき9.8℃という一定の割合で減少します(乾燥断熱減率)。

乾燥断熱線は温位線でもあります。

温位:乾燥空気塊あるいは未飽和の湿潤空気塊を基準気圧(1000hPa)の高さまで断熱的に移動させたときの空気塊の温度

 

【エマグラムから温位を読み取る】

(例1)

  • 800hPaで8℃の温位を求めよ

図2において(800hPa、8℃)の点は、300Kの乾燥断熱線に乗っています。これがそのまま温位になります。

この線を基準気圧(1000hPa)まで移動させたときの気温は27℃です。

(例2)

  • 650hPaで−40℃の温位は?

図2において(650hPa、-40℃)の点は、記載されている乾燥断熱線の上にはありません。この点を挟む260Kと265Kを按分すると、263Kと読み取ることができます。

これを1000hPaの基準気圧まで移動させたときの気温は-10℃です。

図2 温位の読み取り

 

湿潤乾燥断熱線

飽和した空気の上昇に伴う気温減少率を表した線です。

飽和空気は潜熱を放出するので、減少率は乾燥断熱減率より緩やかになります。

潜熱の放出は一定ではなく、高度が低いほど大きいので、減率は上に凸な曲線になります。上昇とともに水蒸気の凝結は続き放出される潜熱は減少するので、やがて乾燥断熱線の傾きに近づいていきます。

 

混合比線

混合比線を使うと、露点温度の高度変化を求めることができます。これを利用して、ショワルター安定指数(SSI)を算出します。

以下の説明を読まなくてもSSIを求めることはできますが、混合比線や飽和混合比線について分かっておきたいという方は読んでみてください。

 

▼混合比の定義

混合比は、空気に含まれる水蒸気の質量と乾燥空気の質量の比で定義されます。

この質量比を気体の状態方程式を用いて変形すると、混合比qは気圧pと水蒸気圧eから求まることが分かります(近似的に、q = 0.622e/pで表されます)。

水蒸気圧は温度の関数ですから、結局、混合比と気圧、気温の間には関係式があることになります。

▼等混合比線

この関係式をエマグラム上に書こうとすると、軸が気圧と気温の2本しかないので工夫が必要です。

このようなときは、混合比をある値に固定して、気圧と気温の関係を図式化します(大学でミクロ経済を学んだ人は、混合比は外生変数だと考えると分かるでしょう)。

図3 等混合比線

 

図3で(p1, t2)と(p2, t1)の2点は同一の混合比線上に載っていて、いずれも混合比はq1です。

しかし、(p2, t1)の点から気圧一定で気温だけがt3に上昇すると、混合比線はq2にシフトします。

このように、混合比を一定にする気圧と気温の組み合わせが等混合比線であることになります。

▼等飽和混合比線

水蒸気圧が飽和しているときの混合比が、飽和混合比です。飽和するということは、相対湿度が100%になって凝結が始まるということです。このときの気温が露点温度です。

すなわち、露点温度を通る等混合比線を特に等飽和混合比線と呼んでいます。

 

図4 等飽和混合比線

 

図4で露点温度の気圧をpとしています。ショワルター安定指数(SSI)の算出するときは、p=850hPaにおける露点温度を通る等混合比線が等飽和混合比線になります。

▼混合比の保存性

乾燥空気では混合比が保存します(=変化しない)。なぜなら、乾燥空気では凝結が発生しないので、水蒸気の量も乾燥空気の量も変化しないからです。

▼なぜ等飽和混合比線が、高度上昇に伴う露点温度の変化を表すのか?

露点温度は空気が凝結を始める、まさにそのギリギリの温度です。

等飽和混合比線よりも右側では混合比は大きくなるので(q=0.622e/p)ので、未飽和になってしまいます。

逆に等飽和混合比線よりも左側では混合比は小さくなるので、すでに凝結が始まっている状態になってしまいます。

ということで、露点温度はどの高度においても等飽和混合比線上に載っていなければならないという制約を受けることになります(図5)。

図5 等飽和混合比線の制約

 

▼乾燥断熱線と混同しないように!

乾燥断熱線は、乾燥した未飽和の空気が上昇するときの気温の下がり方を表しています。

等混合比線は、乾燥した空気の混合比を一定に保つ気圧と気温の組み合わせです。空気自体の気温は、乾燥断熱線に従って減少します。

 

まとめ

空気塊が上昇するときに用いる線のまとめを表に示します。

等圧線と等温線は次回学ぶ状態曲線を読むときにも使います。

 

最後に

エマグラムの用紙に記入されている線について解説しました。

ゴチャゴチャしていて見づらいですが、これは慣れることで乗り越えることができます。過去問題に数回取り組む程度では足りないです。1〜2週間ぐらい毎日見ていれば、線の見分けができるようになるはずです。

 

次回は状態曲線についてです。

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