コンテンツへスキップ

色鉛筆の使い方

(2023.5.23)「何のために、何に塗る?」を追加しました。
(2022.2.23)「色の塗り方」を追加しました。

皆さんは天気図を解析するときに、色鉛筆を使っていますか?

300hPaの強風軸、500hPaの正渦度域、700hPaの上昇流域、850hPaの湿り域を色鉛筆で塗ると、それぞれの重なり具合が視覚的に分かりやすくなります。

今回は学習の手を休めて、色鉛筆の話を聞いてください。

色鉛筆の使い方

使う色

気象庁では、解析に使う色が概ね統一されているそうです。

人によって使う色が異なると、見る方としては紛らわしいですよね。これから色鉛筆を使ってみようという方は、この表の使い方に沿って使うことをお勧めします!

 

湿り域や乾燥域を塗るのに使う緑色、黄色、青色の色鉛筆は、他の色に比べて消費が速くなります。予備を準備しておくと安心です。

 

色の塗り方

色鉛筆を使って塗りつぶすのは好きなようにやっていただいて構いませんが、750hPaと850hPaの湿潤域(T-Td<3℃)を塗りつぶすときは、縁(ふち)取りをするのがお勧めです。

縁取りをすることで湿潤域の形状が明確になるからです。これによりレーダーエコーの雨域や気象衛星画像の雲との対応、あるいは暖湿気移流との対応などの確認がしやすくなります。

また、縁取りをすることで色を塗る領域がはっきりすることで、色を塗りやすくなるという利点もあります。

下図は2022年2月15日12UTCの地上天気図と850hPa面の天気図です。850hPa面の湿潤域を縁取ることで湿潤域が日本海の低気圧の周辺と、関東の東の前線を伴った低気圧の暖域にあることが分かりやすくなりました。

 

色鉛筆の選択

色鉛筆は描きやすいものを選びます。

気象解析における使い方は、「線を書く」「領域を塗りつぶす」の2通りです。いずれも色鉛筆の先端が尖っていると作業がしにくいです。先端が少し丸まった状態でも、柔らかいタッチでストレスなく描けるものがベストです。

私がこれまでに使ってみたものの中で、力を入れずに塗りやすいと思ったのは「サクラクーピー色鉛筆」です。バラで購入しましたが、12色セットだと安いです(消しゴム付き!)。

これまでにキャンドゥ(百円ショップ)、トンボ、三菱と使ってみましたが、いずれも塗り感が良くないです。

ストレスなく塗ることができるというのは、裏返すと芯の消耗がそれだけ早いということです。先ほど挙げた緑、黄、青の3色は、解析後には芯の先が数ミリ減ってしまいます。

(追記)

トンボ(ホモグラフ色鉛筆)の塗り感はサクラに劣りますが(三菱よりは良い)、いくら使っても芯が減らない感じがします。サクラは使った後、毎回芯先を削りますが、トンボは滅多に削りません。コスパは抜群と言えそうです。

 

鉛筆を削る

こちらの写真を見てください。

 

写真の上の赤鉛筆は据置型の手動鉛筆削りで削ったもの、下は携帯型の鉛筆削りで削ったものです。

据置型は削り面が滑らかですが、芯先が長すぎて使いにくいです。それに対して、携帯型で削ったものは削り面も芯先も短く仕上がり、力を入れて線を引いたり色を塗る際に、力を入れやすいように感じます。

携帯型は芯の尖り具合を調節できるものもあります。

携帯型のデメリットは削り面が粗く、ささくれ立ってしまうことです。上の写真でもささくれが見られます。

色鉛筆を使い込んでいると、芯がボキッと折れることがあります。それも芯の先の尖った部分ではなく、軸の奥でまさに「ボキッ」と折れるのです。こうなると、削っても削っても折れた芯しか出てきません。

鉛筆会社のホームページには、「刃の寿命が来たら交換すること」、「芯を尖らせると折れる原因になる」とありました。削り面のささくれも悪い影響を与えるようです。高いものではないので、削り具合が悪くなってきたら交換するのが良さそうです。

 

何のために、何に塗る?

ここまでは色鉛筆の使い方について書いてきましたが、そもそも色鉛筆を使って何をしたいというのでしょうか?私の経験上、大きく2つあると思います。

一つ目は、天気図の特徴を強調して視認性を向上させることで、解析をしやすくするためです。代表選手は特定高度線、等温線、強風軸、トラフやリッジといったところでしょうか。

300hPaの天気図では寒帯前線ジェット(目安は9120〜9360m付近)、亜熱帯ジェット(目安は9600m)を解析して、紫か青で線を引いておきます。ジェットは傾圧帯に現れるので、地上で前線が解析される場合はジェットの南側に描かれます。

その日の天気図の骨格を押さえるためには、ここからスタートするのが大切です。

特定高度線は500hPa天気図で解析することが多いと思います。冬では5400mと5700m、夏だと5880mが代表格です。5400mは気温で−30℃に対応すると覚えておくと便利です。

5880mは夏に優勢になる太平洋高気圧の目安で、これより高度の高い5940mが日本を覆うようになると、猛暑日になるのは確実です。また、梅雨前線を位置を把握するには5820〜5880mに注目です。

等温線は500hPa、700hPa、850hPa天気図のすべての等温線を色付けする人もいます。

そこまでしなくても、寒気の目安として冬季は500hPaの−32℃、−36℃、夏季の−6℃があります。大気不安定の目安としては850hPaや地上の気温も欠かせません。

等値線を色鉛筆でなぞるだけでなく、領域に色を塗ることもあります。500hPaの渦度や700hPaの鉛直流の図(AXFE)では、気圧の谷に対応する正渦度域や上昇流域に色を塗ることで立体構造の理解がしやすくなります。

T-Td<3の領域に色を塗ってトラフとの対応を見ることもあります。また、地上気圧・風・降水の予想図で降水域に色付けすることで、前線の形状が把握しやすくなります。

色鉛筆で色付けをする目的の2つ目に、季節ごとに典型的な気圧配置や高度場、温度場を覚えられることが挙げられます。

同じ天気は2度とないといいますが、地球が太陽の周りを1年かけて周回している以上、季節ごとに類似現象が繰り返して発生します。

日々の天気図解析を無我夢中でこなしていると、だんだんと季節ごとの平均値が身についてきます。時間をかけて天気図を解析する作業は最初のうちは辛抱が必要ですが、気がつくとこのような副産物が得られるので、それを励みにぜひ継続してください!

 

最後に

気象予報士の試験では色鉛筆を使う余裕はありませんが、日常の解析では色付け作業をやることをお勧めします。

色塗りという単純作業をしている間に、いろんなひらめきが得られることもありますよ!

 

この記事が役に立ったと思われた方は、ポチッと押してください。

「色鉛筆の使い方」への2件のフィードバック

  1. 使用感と解析色に迷いが有り、とても助かりました。私は高気圧低気圧が反対色で無意識に塗っていました。合わせていきます。
    まだ勉強を始めて浅いですが、どんどん取り入れていこうと思います。
    ありがとうございましたm(_ _)m

    1. ご意見ありがとうございました。
      本記事に追記したので、お時間があればご覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA