天気図を読むための7つのポイント

講習で教わったM講師には、天気図を見る際の心構えを叩き込まれました。その時は「なるほどなー」と思いつつも、なんとなく聞き流していました。その後、毎日天気図を見るようになってから、その大切さが分かってきました。

その中から今回は7つのポイントを、自分なりの解釈を交えながらご紹介したいと思います。

①天気図を見たら、気が付いたことをメモにとる

誰が見ても当たり前のことでもきちんとメモをして、自分で理解したことを書き残すこと。

誰でも、毎日続けていることは何かあると思います。ジョギングをする、犬を散歩に連れて行くなど。習慣になっていても継続することはなかなか厄介なものです。

毎日、天気図を見るのも結構面倒な作業です。これを商売にしているのであればまだしも、そうでなければできるだけ楽をして「天気図を見る」というノルマをこなしたくなります。

しかし、天気図を見て頭の中で「ふーん、そんなものか」と納得するのではなく、解釈したこと、あるいは疑問に思ったことを書き残すことが大事です。

例えば、日本の南に前線があれば、「日本の南に停滞前線がある」と書きます。当たり前すぎて、わざわざメモする必要がない(だって面倒なんだもん!)ことでもちゃんと書きます。

「こんなことをしてて、気象解析ができるようになるのかな?」と疑問が湧いてきます。しかし、実際にやってみると、その効果は絶大です。

まず、繰り返し発生する現象に気がつくようになります。四季の移り変わりに伴い気温変化は毎年同じような傾向をたどるため、同じ季節に同じような気圧系の変化が生じることが認識できます。

「いつもこれってあるよね」と気づいてくれば、だんだんと書かなくなるかもしれません。裏を返せば、「これはあんまりないことだな」っていうことも分かってきます。文字に書き残すことで、一つひとつの作業をおろそかにせず、着実にこなすことができます。

次に、だんだんと細かいところに気がつくようになります。最初は「日本の南に停滞前線がある」だけだったのが、やがて「前線の北側では北よりの風、南側では西よりの風が吹いている」なんていうことを書き足すようになっていきます。それはメモをとり続けているうちに、だんだんと「これはなぜこうなんだろう?」と疑問を持つようになり、その原因を探り始めるからです。

そのうちに、「じゃあ湿りの入り具合はどうなっているのか、850hPaの相当温位を見てみよう」とか「雲はどうなっているのか、衛星画像で確認しよう」と発展していきます。

メモを取る対象は天気図にとどまらず、衛星画像やレーダーエコーを見たときに、その形状や形態を書いておくことも大切です。

エコーや衛星画像は結果であり、そのようになった理由が必ずあります。渦を巻いていたり線状になっていたりすれば、それは風向きや循環を表現しています。予報士試験ではよく、「雲の形を〇〇字以内で表せ」というような出題がありますが、そのようなトレーニングを日頃から行うことが大切であることを示しています。

最初のうちは書く必要がないと思われることでもどんどんとメモってみましょう。誰かに見せる訳でもないので、恥ずかしいことはありません。毎日同じようなことの繰り返しが出てくれば、自分で「これはなんでだろう?」と思います。そのときに、その原因を探すようになって天気図を見る目が養われてくると思います。

 

②作業を繰り返すことが大事

線を引っ張ったり、色を塗ったり。
気象庁の予報官になる人だって、毎日こんなことの繰り返しです。

ここ数年、気象庁の予報官がメディアに登場する機会が増えました。予報作業の実質的責任者である主任予報官になるには、キャリアによる差はありますが20年ほどかかるそうです。彼らも最初は先輩の見よう見まねから始まり、天気図と向かい合う日々を続けるわけです。私のような「起床予報士」(朝起きてから、予報作成に1日かけても誰からも文句を言われない)ではなかなか追いつけません。

ちなみに、天気図や雲を見るのが好きで気象庁に入庁しても、必ずしも気象に関わる仕事に従事できるとは限りません。海洋、地震、津波、火山などのお仕事もあるわけです。そうした人の中には会報と呼ばれる打ち合わせに参加して、気象の勉強を続ける方もいるそうです。そんな中で主任予報官になれるということは、ある意味で気象オタク冥利に尽きると言えるのでしょう。

さて、前項①のメモを作成する作業って、実は結構大変です。地上天気図では日本の天気に影響を与えそうな気圧系に着目します。日本付近だけでなく、大陸を含めた広い範囲で全体の気圧パターンや状況を概観します。
こんな時、前線を伴う低気圧が通過していたり、西高東低の気圧配置になっていたりと「メリハリの効いた」天気図であれば、見たままを書くことに苦労はありません。しかし、時によってはこれといって捉えどころのない天気図もあります。

図1 地上天気図

例えばこんな天気図の時にはどうでしょうか(図1、2018.11.4 9時の天気図)。

沖縄にある低気圧の他には、目立った気圧系が見当たりません。本州付近の気圧傾度は小さく、等圧線がかかっていません。何をメモすれば良いのか、慣れないうちは悩むところです。

天気図を毎日見ていると、このように特徴の乏しい気圧配置の日が多いものです。むしろ、年間の大半はそのような日で占められています。

このようなときこそ地上天気図だけを見るのではなく、ほかの天気図や気象衛星画像と見比べることで、目を養う機会になります。

 

 

図2 気象衛星画像(可視)

図2は同一時刻の衛星画像(可視)です。等圧線がないと思っていたのに、太平洋から東日本にかけてベッタリとした雲域が広がっています。

これは一体なぜなのか?を天気図を見ながら考えると、日本のはるか東に1028hPaの高気圧が東進しているのに気がつきます。

閉じた等圧線は日本にかかっていないので影響はなさそうに見えますが、実は高気圧の縁を回る南よりの風が吹いているのではないか?と思い当たります。

850hPaの相当温位(FXJP854)を見れば、そのような風が入っていることを確認できます。

 

 

 

この要領でメモを作成したら、最後にその日の全国の天気概況を作ってみましょう。実況の天気図を使えば、その日の天気はすでに結果が出ているので、比較的作りやすいと思います。tenki.jpで天気概況の見本を見ることができますが、慣れてくればこれよりも詳しい概況を作ることができるようになります。

こうした作業を繰り返していくと、いろいろな現象が頭の中に蓄積されていきます。そして気象シナリオを組み立てるときに、それらがベースとなり応用がきくようになります。

 

③予報の出発点は実況である

実況と、それから今に至るまでの経過を診て、それから次にどうなるかを考える。

「天気予報」というぐらいですから、この先の天気がどうなるかを予測することが最終目標です。だからと言って予想図だけを見れば良いのではなく、実況とそこに至る経緯を押さえることが重要です。

これには2つの意味があると思います。1つは、解析に必要な基本スキルは実況に凝縮されているということです。実況解析ができなければ、将来の予想ができないのは当然でしょう。

2つ目は、気象は基本的に連続的に変化していくもので、それを追いかけていくのが手順だということです。M講師がよく用いていた比喩が、医師による問診の例えです。

「風邪をひいたかな?」と思って医者に診てもらいにいくと、いきなり薬を処方されるようなことはありません。いつ頃から症状が出たのかを尋ねてから、問診(体温を測ったり、聴診器をあてたり)に移ります。そして最後に、「薬を○○日分出しますから、毎食後に飲んでください」と言って終わります。

実況図を見てその日の天気を確実に説明できるようになること。予想図を見るのは、それができるようになってからでも遅くはありません。

 

④スケールの大きい現象から見ていく

局地的な現象でもスケールの大きな現象の中で起こるので、背景の場を理解すること。

毎年のように集中豪雨のような局所的な気象災害が発生しています。メディアの報道も盛んになるので多くの関心を集めます。天気図が少し読めるようになると、そのような現象を解析したくなります。

しかし、局所現象といえどもそれだけが独立して発生するのではなく、大きなスケール(「背景の場」という言葉を使われていました)の中で起こります。よく、「親亀の上に小亀がいて、小亀の上に孫亀がいる」という例えを使いながら、微視的な天気に飛びつくのではなく、大きな現象から順を追って見ていくことが大事だと強調されていました。

具体的には、300hPaからスタートして、500hPa、700hPa、850hPa、そして地上と順を追って降りて見ていきます。地上は気象要素の変化が激しいですが、上層では地上の細かい変化は受けずに、相対的には緩慢に変化していく。そのような背景の場を押さえた上で、だんだんと規模の小さい現象を見ていくという順序です。

もちろん、下層を見ないとわからないようなことあります。例えば下層で暖湿気が流入しているかどうかは、850hPaなどを見ないと分かりません。しかし、500hPaで正渦度があれば、「下層に暖湿気が入っていれば、天気が崩れるかもしれない」と予測ができます。このような前提で衛星画像を見て、対流性の雲を確認できれば、「おそらく下層に暖湿気が入っているな」と予測がつきます。このように関連づけていくことも大事です。

 

⑤下層から上層を思い浮かべる

天気図を見たときに、上層の流れがどうなっているかが頭に浮かぶぐらいになると、それは大したものです。
すぐにできなくても、関心を持って頻繁に見ていれば、だんだんつながりが分かってきます。

前項の④では、200hPaや300hPaの天気図を見て、順に下層を見ていくということでした。⑤は、それとは逆のことを言っています。地上天気図を見て上層の流れや衛星画像の雲域がどうなっているかを連想できるか?

下層と上層の関連性を見ていると、このような実力がついてくるのだと思います。このような読み方ができれば、天気図の解析も効率的にできるでしょう。また、山中のように地上天気図しか入手できない環境でも、立体構造を想像することができるはずです。

 

⑥変化・違い・連続性・関連性

天気図や解析図をみるときは、この4つ(変化・違い・連続性・関連性)を頭に入れておく。
慣れてくると、これが自然にできるようになります。

③にもあるように「予報の出発点は実況」ですが、背景の場を理解するにはただ1枚の天気図だけを見るのではなく、時間や空間などいろんな軸で検討しなさいということだと私は理解しています。

直近の24時間、あるいは12時間で気圧系はどのように変化してきたのか。あるいは低気圧がいくつかある場合、それぞれの違いは何か。

あるいは、例えば地上で低気圧が解析されていなくても、現象には連続性があるので、850hPaや700hPaで低気圧性循環が顕著になっていないかを見てみる。そして、関連性については、ある現象を下層と上層で見比べてみるなど。

予想図を見る際にも、実況や予測の「変化」や「違い」を読み取って、 実況から予測まで現象の「連続性」を意識する。この一連の作業を実際にやってみようとすると、すごく難しいです。目の前の天気図を追っかけるだけでも慣れないと作業が大変で、過去の時刻の天気図と見比べるところまで手が回らないということがあります。

 

⑦衛星画像を動画で見る

衛星画像を見るときには、それぞれの雲がどう動き、それが何に対応しているのかを確かめる。

天気図をひと通り見終わった後に衛星画像と見比べると、①から⑥で読み取った自分の認識が正しいかを確認することができます。

水蒸気画像ではジェット気流の位置やトラフの場所を確認。赤外画像では雲域と下層の湿りとの対応やバルジ、可視画像では対流性の雲域の確認などです。これらはある時刻のスナップショット、すなわち静止画像から読み取る情報です。

図3 動画の設定

一方で、雲の移動や変化を追跡することも大切です。衛星画像は10分ごと(高頻度は2.5分)に撮影されています。これをコマ送りにしたものは「動画」と呼ばれています。

気象庁ホームページでは「最近3時間」「最近6時間」「最近12時間」(高頻度は「最近1時間」「最近3時間」)を選択して見ることができます。

動画を見ることで雲域の移動の方向と速さや、時間の経過につれて雲域が拡大しているのか縮小しているのかを追うことができます。

雲域の動きとともに雲の色(濃い、薄い)、広がり、境界(明瞭か不明瞭化)なども合わせて見て、それが何に対応しているのかを天気図と照合することを繰り返していると、経験値がついてくるようです。

気象庁ホームページでダウンロードできる衛星画像は過去5日分しかないので、解析用に保存しておきたいところです。自動保存するやり方についてはいずれ、記事にまとめたいと思います。

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